クラウドサービスを活用したDX “as a Service”とは?

クラウドサービスを活用したDX “as a Service”とは?

変化が早く不確実性の高い時代にあって、生き残りや事業競争力強化のためにDXを目指す企業が増え、その成功例も数多く生まれています。こうした成功例は、定めた一本道を手戻りなく進むだけで達成できるものではなく、柔軟かつスピード感をもって試行錯誤を繰り返すことによって成し遂げられる場合がほとんどです。そしてこのようなニーズに応える、もっとも効果的な選択肢の1つがクラウドサービスの活用といえます。

今回はそのクラウドサービスの提供形態 ”as a Service”についてみていきましょう。

クラウドサービスの提供形態

クラウドサービスは「サービス提供事業者がサービス提供に必要な機器を保有」し、それらの「基本的な維持管理にも責任を持った上」で、各サービス提供事業者の「独自の付加価値を乗せて」「ネットワーク経由で利用者に提供される」サービスといえます。

提供する付加価値はサービス提供事業者によってさまざまですが、サービス提供の形は基本的に次の3つに大きく分類されることがほとんどです。

SaaS(Software as a Service)
PaaS(Platform as a Service)
IaaS(Infrastructure as a Service)

3つに共通するのは「as a Service」の部分です。直訳すると「サービスとして」となります。つまり「サービスとして」提供する「S」や「P」や「I」ということです。

もちろん、さらに細かく分類されることもありますが、その多くはサービス提供事業者などが独自の分類を確立することで自社サービスの独自性や先進性のアピールを狙ったもので、たいていはこの3つをおさえておけば十分でしょう。

いまではあまりに多くの「as a Service」が存在するため、まとめた概念としてXaaS(X as a Service:サービスとして提供するエックス)と表現することもあります。

さて、この代表的な3つの”as a Service”は次のサービス提供範囲に分類できます。

● SaaS サービスとして「ソフトウェア(アプリケーション)」を提供
● PaaS サービスとして「プラットフォーム(開発環境や動作環境)」を提供
● IaaS サービスとして「インフラ(ハードウェア)」を提供

では、次にこの3つの関係性をみていくことにしましょう。

SaaSとPaaSとIaaSの関係性

まずこの3つの呼び方から確認しましょう。といってもこの3つ、いろいろな呼び方をします。以下は当社での呼び方です。

● SaaS サーズ
● PaaS パース
● IaaS イアース または アイアース

IaaSについては当社の中でも2通りの呼び方をしています。

このように呼び方は何ともハッキリしないのですが、実はその位置づけもあまり明確ではありません。

下図はSaaS、PaaS、IaaSが提供するサービス範囲をあらわしています。
濃い青色のSaaSとIaaSは明確なのですが、薄い青色で示したPaaSは提供されるサービス範囲がサービス提供事業者によって異なり、明確ではありません。

                  
ここでは、SaaSはアプリケーション。IaaSはハードウェア。PaaSはその中間とでも覚えておきましょう。

SaaSとは

SaaSはアプリケーションの機能をネットワーク(多くの場合はインターネット)経由で利用できるサービス提供形態です。

使いたい機能のサービスが見つかれば、自社でアプリケーション開発をすることなく、すぐに利用開始できます。しかも、自社資産ではないので使わないときにはすぐに利用停止することもできます。

すでに市場には多種多様な機能を提供するSaaSが存在しています。自社のDX実現に役立つ可能性の高いサービスが見つかれば、スピーディにテストや導入をおこなうことができます

一方、ネットワーク越しにサービス提供を受けるので、表示速度や処理速度が問題となるケースもあります。問題の原因はサービス提供事業者側にある場合もあれば、利用者側にある場合もあります。いずれにせよ、本格利用開始前のテスト利用が欠かせません。

また、サービス提供事業者内でデータがどのように取り扱われているか情報公開されていない場合が多く、不安は残ります。約款や利用規約はあるものの、これまでもデータ喪失などの事故例があるのは事実で、利用者側のリスク対策も欠かせません。

IaaSとは

IaaSはハードウェア機能をネットワーク越しに利用できるサービス形態です。かつてはHaaS(Hardware as a Service)と呼ばれたこともありました。

長らく箱型の筐体でおなじみのサーバー機器やネットワーク機器を思い浮かべると分かりやすいですが、これらの機器が持つCPUやメモリ、ディスク装置などの機能を自社で保有することなくネットワーク経由でサービスとして利用できます。

一般にIaaS提供事業者は障害に備えて機器構成を冗長化していることがほとんどです。また、多くのサービスではデータもバックアップされています。利用者側からみると、自社で冗長構成の機器やデータバックアップ環境を準備する場合とくらべ、非常に安価に、高い可用性やデータ保全性を手にすることができます

一方、SaaS同様にネットワーク越しのサービス利用ですので、手元に設置した自社専用機器と比べると処理速度や反応速度は遅くなる傾向にあります。また、利用者はバックアップ先を含むデータの保管場所を指定できないことが多いので、期せずして海外にデータが保管されていることが発覚し問題となるケースなども散見されます。

IaaSとは

PaaSはSaaSとIaaSの間に位置づけられ、サービスとして動作環境を提供すると説明しました。PaaSのサービス提供範囲は先の図ではミドルウェアやOSの範囲となります。また、メリットやデメリットの観点でもSaaSとIaaSの中間的な性格になります。

PaaSでは多くの場合、アプリケーションの開発に必要となる環境やデータベースなどがサービスとして提供されます。IT技術者は誰もがハードウェアに詳しいわけではなく、誰もがプログラミング技術を駆使してアプリケーション開発ができるわけでもありません。対応技術分野には得手不得手があります。

たとえばハードウェアにはあまり詳しくないIT技術者がアプリケーション開発をおこなう場合、開発環境としてPaaSを利用すると、ハードウェアのことを気にせずにアプリケーション開発に注力できます。

PaaSのサービス提供範囲はサービス事業者により異なります。利用者が求める範囲の機能を提供するサービスを見極め、活用することで、利用者が本来注力したいビジネスに専念できるようになります。

当社が現実的なDX成功のために活用をおすすめしているサイボウズ社のクラウドサービスkintoneもPaaSに分類されます。kintoneはプログラミングなしでアプリケーションが作れる(ノーコード開発という)、アプリケーション開発および動作環境をサービスとして提供するプラットフォームです。

アプリケーション開発が必要な場合、これまではITの専門家に依頼する必要がありましたが、kintoneを利用するとプログラミング技術を必要とせず、意に沿ったアプリケーションが利用者自らの手で開発できるので、かんたんにDXを目指すことができるようになります。

DXに適した”as a Service”とは?

DXの手段としてクラウドサービスを活用する場合、最初はSaaSの利用を考えるのではないでしょうか?

もちろん、IaaSやPaaSを利用し、その上に自社でアプリケーション開発しても良いのですが、SaaSにくらべるとクラウドサービス利用の最大のメリットである、サービス提供開始までのスピードが損なわれます。また、自社開発のアプリケーションの動作環境がサービスに依存するため、機能や性能の制約を受ける可能性もあります。

また、DX推進のフェーズが進み、単一SaaSの活用からさらに前進し、複数のSaaSの組合せや、さらにそれらを連携させて有効活用しようと考えると、次の選択肢はPaaSの活用になるかもしれません。

このように必要とするサービスはDXの進行浸透の度合いで移り変わる可能性があります。

いずれのサービスを利用する場合も、サービス提供事業者は絶えず新機能の実装や、性能改善を行っています。サービス利用者はそれをさほど意識することなく利用できるという点はどのサービスも変わりありません。

こうしてみると、どのクラウドサービスを選び、どのように有効利用するのかがDXの成否を握る大きなポイントの1つとなることが想像できるのではないでしょうか。

提供サービスの特性を見極め、求める機能に応じてクラウドサービスを上手く選択することが、みなさんのDXを成功させる近道になるかもしれません。

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