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メディアの記事やセミナーなどで紹介されるDX事例をみると、どの事例も苦労や工夫を重ね、試行錯誤の上でDXを実現していることがわかります。しかしながら紹介される事例はどれも過去の成功の振り返りが多く、失敗した事例が語られることはあまりありません。
だからといって行き当たりばったりでDXに着手し、もがき苦しみながら試行錯誤しても効率が悪く、DX実現の前に気持ちが萎えてしまうかもしれません。ではこれからDXに着手する場合、どのように試行錯誤すればよいのでしょうか。
DX推進には王道や正解はありませんが、できるだけ早く正確に成功に近づくためにどのようにすすめるべきかみていきましょう。
DXの対象を見極める
DXは魔法の杖ではありません。
どんなものでもデジタル技術を活用して変革できる訳ではありません。また、自社のすべての業務内容やビジネスプロセスをデジタル技術によって変革できる訳でもありません。
DXには向き不向きがあります。
この向き不向きは普遍的に定義されるものではなく、その企業や対象業務に合わせて判断されるべきといえます。場合によっては同じ業務内容でもタイミングによる向き不向きもあるかもしれません。
さらには、DXによって全社のすべての業務を一度に変革することも難しいでしょう。DXの対象となる業務や組織を絞り込み、DXによる最も効果が高いと見込まれる部分から変革に取り組むことをおすすめします。
前置きが長くなりました。
試行錯誤のその1は「DXの対象を見極める」です。
自社のDXに着手する前に、今のタイミングで、どの業務がDXに適しているのか見極めることは非常に大切なポイントです。
この見極めをあやまると、DX推進が上手くいかず、たとえ上手く進んだとしても期待する成果が出ない可能性もあります。すると当初はDXを期待していた自社内のDXに対する追い風機運も吹き飛んでしまい、周囲の協力も得にくくなるかもしれません。
DXによって目指す変革後の自社の姿を明確にし、DXの対象とする業務や組織などを見極め、その対象を深くまで理解・把握し、時間軸なども考慮した上で、DXの対象としてふさわしいかを見極める。まずはそのための試行錯誤を繰り返すことをおすすめします。
自ら知見を獲得
DXの対象を見極めた後は、いよいよDXを実現する具体的な手段について試行錯誤する段階にすすみます。
DXではデジタル技術を活用するので、まずは活用を検討するデジタル技術について、DXを推進する担当者自らが知見を得て、採用可否を判断できる程度の理解を深めておくことが望ましいでしょう。
たとえば当社がDX推進に用いるデジタル技術としておすすめしているITサービスであるkintone(キントーン)の場合、ローコード・ノーコード開発ツールなので、プログラミング技術を必要としません。そのため基本機能を活用する限りにおいては専門技術者による開発支援を必要とせず、事業部門で担当者が自ら業務アプリケーションを作ることができます。
まずはこのようなツールを用いてどのようなことが実現できるのか、事例情報を収集したり、すでに導入活用している他社事例なども参照して知見を得ることをおすすめします。
ある程度ツールの機能や使い勝手が分かれば、実業務への実装は別の担当者に任せてもよいでしょう。実装を依頼する場合も具体的な指示ができるようになっているはずです。
たとえ専門業者に任せる場合でも、明確な実装イメージをもってコミュニケーションできるようになるので、完成したアプリケーションに対するイメージや機能の認識違いも防ぐことができることでしょう。
この段階の試行錯誤はある程度自らの中で完結できるので、比較的すすめやすいでしょう。
関係者の協力を得る
ここまで試行錯誤をしてきた皆さんは、DXの対象がしっかりと見極められていて、DXに用いるデジタル技術についてもある程度の知見をお持ちのことでしょう。
すでに皆さんにはDXの成功に向けて大きなアドバンテージがあります。もしかすると基本的な業務改善なら済ませてしまっているかもしれません。
そんな皆さんがすすむ次の段階は「高度化」「洗練」です。
自ら努力して得た知見でここまで進めてきましたが、中期的にDXを全社に展開していくためには、高度化や洗練などのレベルアップが欠かせません。
ここでいうレベルアップとは、ITツールの活用面だけでなく、業務面ではより多くの社員を巻き込むことを含みます。
DX推進を担当する皆さんがどれだけ優秀でも、人的リソースや時間には限りがあります。リソースや時間の制約をブレイクスルー(突破)するには関係者の協力が欠かせません。
自社の中では関連部門のヨコのつながりや、決裁権限者とのタテのつながりによる協力。
他社も含めるとITツールの導入を支援する経験豊富な専門業者や、取引先・関連企業などが含まれるかもしれません。
こうした関係者の協力を得て、これまでよりもさらに大きな枠組みの中で試行錯誤をおこない、推進中のDXを高度化、洗練させていくのが次の段階です。
ステークホルダー(利害関係者)が増えるので、これまでのようなスピード感で試行錯誤を重ねることが難しくなるかもしれません。
ですが、同じゴールを共有し、これまで得てきた知見や経験を総動員すれば、必ずや関係者の協力を得ることができ、DX成功というゴールに迫ることができるでしょう。
さらに磨きをかける
これまで3つの段階での試行錯誤をみてきました。
これらは一度終われば終了ではありません。
さらに各段階をまたぐ形で試行錯誤を行ない、磨きをかけていきましょう。
現在主流のソフトウェア開発手法に「アジャイルソフトウェア開発」というものがあります。すでにご存じの方も多いとは思いますが、これはソフトウェア開発に必要な工程を小さな単位(サイクル)で繰り返しながら、トライアル&エラーで開発を進める手法です。
現代はITをはじめとする技術進歩のスピードが速く、市場動向を読むことも難しくなっています。その状況に対応するには、変化への対応力を身に着けること、つまりスピードや柔軟性を身に着けることが大切といえるでしょう。
ソフトウェア開発では作業に長い時間をかけていると、その間に開発中のソフトウェアに求める要求仕様が変わってしまうことがあります。そのような状況に対応するために生まれたのがアジャイルソフトウェア開発手法です。
DXも同じです。
全社の変革が目的だからといって、時間をかけ過ぎるのは禁物です。その間にも市場や競合は急速に変化していきます。時間がかかるのであれば、フェーズ分けして段階的な実装を目指すなど、常に変化に備えるよう心がけましょう。
まとめ
DXを推進する上で意識しなければならないことは数多くあります。
今回はその中で効率的に成功に近づくための試行錯誤のすすめかたをみてきました。
DX成功に王道はありません。
試行錯誤で確実に、段階を経ながら、かつスピード感を失うことなくDX推進していけば皆さんのDXは成功を収めることでしょう。
さいごに1つだけ。
試行錯誤を繰り返すうちにドキュメントを残すことを忘れてしまうことがあります。または忘れていなくても優先度が下がってしまうこともあるでしょう。
ですが、DXを全社に広め継続させるためにも、皆さんが苦労した試行錯誤の結果を記録としてドキュメントを残すことも忘れないようにしましょう。