DXをより着実かつ現実的に進める方法として、当社ではサービス連携をおすすめしています。サービス連携では、何と何を、どう連携させるのか、がポイントとなります。今回はこの連携相手や連携方法を考えるために役立つ視点として「バイモーダルIT」をご紹介します。
専門的なくわしい解説は数多くの識者がweb等で情報発信されていますので、そちらをご確認ください。
ここではそうした専門的な説明を読み解くために必要な基本的知識について、できるだけわかりやすくご紹介したいと思います。
目次
バイモーダルITとは
みなさん「バイモーダルIT」という言葉をご存知でしょうか。
「バイモーダル」とは英語で”二峰性”という意味です。峰(山頂)が2つ連なる山の景色や、2つの山をもつ曲線グラフなどをイメージしてください。イメージするときのポイントは、2つの頂(いただき)があり、それらは断絶されているのではなく、ゆるやかに連続性をもっている(つながっている)ということです。2つの頂があり、頂はおたがいに関連性があるイメージです。
これをITの世界になぞらえた考え方が「バイモーダルIT」です。つまりITシステムを、関連性のある2つの頂に分類する考え方になります。
ではその2つの頂とは何でしょうか。
バイモーダルITという考え方が語られるとき、2つの頂は「モード1」、「モード2」と表現されます。モード1、モード2というつかみどころのない言葉がでてきました。
ご安心ください。これから2つのモードをわかりやすく順に説明していきます。
モード1とは
かつてよりIT活用は進んできましたが、クラウド技術が普及するまで、企業にとっては商品やサービスを「売ってから」の処理に、どうIT技術を活用するかが主な関心事でした。たとえば、いかに早く、正確に、継続的に、安全に、効率的に、かつ低コストで処理するかなどをIT活用によって実現することを目的としていました。顧客管理、販売管理、サプライチェーンマネジメント(SCM)などを想像するとわかりやすいでしょう。
こうしたITシステムには過去から記録してきた情報が蓄積されていて、蓄積した情報資産をいかにしてビジネスに活かすのかが、今日もつづく最大の関心事であり課題の1つです。
こうした情報の蓄積と活用を目指すITシステムを「Systems of Record (SoR エスオーアール)」とも呼びます。直訳すると「記録のシステム」となります。そして、バイモーダルITではこのSoRをモード1と分類しています。また、モード1は情報資産を守り、そのため高い信頼性や安全性が求められることから「守りのIT」ともいわれます。
ここではこんなイメージで覚えておきましょう。
モード1 = SoR = 記録のシステム = 守りのIT。 情報資産の蓄積・保全と活用。
モード2とは
クラウド技術やIT利用が進み、これまでの対面での取引に加え、いわゆる「ネット」を使った取引が増えています。それにともない、ネット上で取引相手に向けたさまざまな情報発信をおこなうサービスも続々と登場しています。さらにはネット上で収集したみなさんのwebページ閲覧履歴や検索履歴、購買履歴などを分析活用し、あらたな商品・サービスの宣伝につなげることもおこなわれています。たとえば、みなさんもwebページを開いたり、検索エンジンでキーワード検索すると、広告を目にすると思います。あの広告はひとりひとり表示内容が異なります。また、いわゆるネットショッピングサイトで表示されるおすすめ商品もひとりひとり表示内容が異なります。
上記は一例ですが、このように新たなビジネスにつなげるために活用するITシステムをモード2と呼びます。
モード2の目的は、商品やサービスと顧客との結びつきを作ることです。また、モード2は「Systems of Engagement (SoE エスオーイー)」とも呼ばれます。Engagementは従事、婚約といった意味の英単語です。婚約はさておき、結びつきが強いという意味合いはご理解いただけると思います。直訳すると「つながりのシステム」でしょうか。
ここまで見てきてお分かりのように、モード2に分類されるITシステムは、商品やサービスを「買ってもらう」ことを目的としています。そのためモード1の守りのITに対し、モード2は「攻めのIT」ともいわれます。
ここではこんなイメージで覚えておきましょう。
モード2 = SoE = つながりのシステム = 攻めのIT。 新ビジネスの創出。
モード1とモード2の両立
バイモーダルITはITシステムを2つに分類する考え方と説明してきました。また、この2つは連続性があり、つながっていることも紹介してきました。
この2つを完全に切り離して別々に考えることは現実的ではありません。無理な分離もすべきではないと思います。
一方、事実としてモード1とモード2ではITシステムの特性が大きく異なります。開発技術、体制、性質、開発手法、スピード、可用性など、2つのモードに求められる要素はまったく異なります。専門的な観点からみると、2つのモードを両立させることは容易ではないのも事実です。
ですが、この2つのモードを上手く連携させ、互いの強みを引き出し合うことができれば、情報資産を活かした上での新たなビジネスの創造、つまり守りと攻めを両立させられることでしょう。
バイモーダルITという考え方を理解し、そのうえで自社既存のITシステムがモード1、モード2のどちらに分類できるか考察してみましょう。そのうえで、各システムやサービスの特性に応じた連携方法や活用方法を検討することが、DX実現の果てに目指す自社の姿に着実かつ迅速に近づく近道かもしれません。
DX成功には、単体システムに目を奪われることなく、システム全体を見渡す広い視野を忘れないことが大切です。
皆さんが実現する2つのモードのバランスが最適化されたITシステムは、力強く事業の発展を支えることでしょう。