当社がおすすめするDXへの取り組み方は「スモールスタート型DX」です。これは、どんな小さな業務でもかまわないので、改善効果が一番大きそうな業務を見つけ、そこから改善に着手し、業務改善の効果を肌感覚として実感し、成功体験を重ねながらDXの範囲を広げていくDXのすすめ方です。
一方、スモールスタート型DXのデメリットは、小規模な改善活動がいたるところで発生し、それぞれの活動で用いられるツールやサービスも多岐にわたってしまい、似たような活動や重複する活動が乱立してしまう可能性があることです。
今回はそんなスモールスタート型DXのデメリットを克服するにはどうすればよいかをみていきましょう。
目次
スモールスタート型DXのデメリット
改めて、当社がおすすめするのは「スモールスタート型DX」です。
その理由については以下のコラムをご覧いただければと思います。
「スモールスタート型DX」は、各企業の切実な事情や状況を踏まえながら現実的にすすめることができ、リスクも比較的少ないDX実現へのアプローチとして、とくに中堅中小規模の企業には適しているといえます。
しかしながら、スモールスタート型DXにも欠点がない訳ではありません。
スモールスタート型でDXを推進する場合、最初の指摘としてあげられるのが、いわゆる「サイロ化」です。
「サイロ」とは上の写真のように、飼料や物資を貯蔵しておくための円筒形の建物です。
写真はレンガ製のサイロですが、最近は金属製のサイロを見かけることもありますね。
このサイロ、見た目の通り1棟ずつ独立して建っているのが特徴です。
このサイロになぞらえ、各組織が別々に業務改善などの活動をすすめ、個別にITシステムやサービスを導入してしまい、孤立して横の連携がとれていない状態を「サイロ化」といいます。
もう少し具体的に説明すると、スモールスタートで現場発信型のDXを推進する場合、改善活動が複数立ち上がり、その結果作成されるローコード・ノーコードツールなどで作成したアプリケーションやSaaSの業務利用も個別最適で進んでしまう状態がサイロ化といえます。
これを放置すると、重複や似たような機能の発生などにより、業務改善前よりもコスト面や業務プロセス面、体制面などで改善前よりも逆に非効率になり、やがて収拾がつかなくなる可能性もあります。
スモールスタート型DXを成功させるコツ
ではスモールスタート型DXによるサイロ化を防ぐにはどうすればよいでしょうか。
キーワードは「ガバナンス」です。
手元の辞書によると「ガバナンス」とは統治・支配・管理という意味だそうです。
皆さんもコーポレートガバナンス(企業統治)という言葉を聞いたことがあると思います。
これは多くの場合は企業があらかじめ定めた方針やルールに沿って正しく企業運営しているか、その企業の株主が管理するという意味合いとされます。
ですが最近ではガバナンスという言葉がより広い分野で使われ、何らかの統治・支配・管理する対象がある場合に「ガバナンス」という言葉が使われることが多くなりました。
話を元に戻すと、スモールスタート型DXにもガバナンスの考え方を正しく適用することで先に示したサイロ化を防ぐことができそうです。
つまり、業務改善活動の立ち上げを事前承認制にする、ITツールやサービスの導入にはあらかじめ定めたプロセスをとるなど、あらかじめ方針やルールを定めることで、業務改善活動の乱立による個別最適化(サイロ化)が避けられるようになり、DXの成功がより具体的にイメージできるようになるかもしれません。
ガバナンスとルール
ここで混乱しがちなのが、ガバナンスとルールの関係です。
たとえば、とある企業で「ガバナンスを強化しましょう!」と宣言したとしても、具体的には何をすればよいのか、現場の従業員には伝わりません。
先ほど見たように、ガバナンスは統治・支配・管理すること自体を示す言葉なので、その具体的な中味はルールや方針、規約などという形で定める必要があります。
「ガバナンス」と「ルール」の関係を示すと、ルールの策定と遵守の積み重ねがガバナンス強化につながるイメージでしょうか。
スモールスタート型DXにあてはめると、個別の業務改善のすすめ方や、その改善のために用いるITサービスや製品の選定、採用承認などのルールを定めておき、それを守った上で業務改善活動が複数立ち上がり、ルールにもとづいて成果を出すことで、ガバナンスが保たれつつ全体の業務改善が達成されていく。これがスモールスタート型で全社のDXが実現される状態ということになります。
何を意識し、何を定めるべきか
繰り返しになりますが、スモールスタート型DXをすすめるためには、改善活動や利用するITツールの乱立などによる混乱と非効率化を避けるため、ガバナンスの観点が大切です。
そしてガバナンスを維持強化するためにはあらかじめ方針やルールを策定し、現場の従業員に改善に向けた「具体的な動き方」を意識してもらうことがポイントとなります。
では、方針やルールとして何を意識し、何を定めれば現場の従業員に具体的な業務改善に向けた動き方を理解してもらいながらガバナンスの維持強化ができるのでしょうか?
スモールスタート型DXをおこなうにあたり、当社がおすすめしているITツールがサイボウズ社のローコード・ノーコード開発/実行環境であるkintone(キントーン)です。
このkintoneでは、活用する上でのガバナンスガイドラインがサイボウズ社から示されています。
「kintone ガバナンスガイドライン」 サイボウズ社
https://kintone.cybozu.co.jp/jp/governance_guideline/
詳しい内容は上記ガイドラインをご覧いただきたいのですが、ガイドラインに示されている内容と、当社の見解とを合わせると、ルール化や方針策定のヒントとして次のようなキーワードが見えてきます。
・個人情報・機密情報の取扱い管理(情報漏洩対策)
・アクセスセキュリティ管理
・kintoneアプリの管理
・責任定義(組織、個人)
・承認基準策定(アプリ作成ルール、運用ルール、アクセス権ルール)
・データ保全管理(バックアップ)
・利用状況管理(ディスク容量等)
・アカウント管理
・棚卸管理(資産管理)
・コスト管理
・変更等の履歴管理
・アプリ停止のリスク管理(DR/BCP)
・承認プロセス
・承認履歴管理
・方針やルールの定期更新管理
(順不同)
キーワードを見ていただくと、ガバナンスを維持強化するためにルール策定した方がよい項目や内容のイメージが湧くのではないでしょうか。
たくさんの項目がありますが、これらすべてではなくても、自社にとって重要と思われる項目からルール策定や方針策定されることをおすすめします。
さいごに
当社がおすすめするスモールスタート型DXには、現場の実情や実態を踏まえながら現実的にDXを進められるメリットがあります。
しかしながら一方では、スモールスタート型で改善活動の主導権を現場に委ねるがゆえの弱みもあります。
その弱みによる影響を予見し、あらかじめガバナンスやルールの観点から予防策をとっておくことで、スモールスタート型DXをきっかけとする全社DXの実現がより現実味を帯びてくるのではないでしょうか。
メリット、デメリット、強み、弱みをよく理解した上で自社のDXをすすめることができれば、皆さんのDXもまた一歩成功に近づくことでしょう。