「攻めのDX」と「守りのDX」

DXというと、1つの企業あたりの活動は1つというイメージもあるのではないでしょうか。実はDXは企業活動のあらゆる単位で、あらゆる目的のためにおこなわれます。そのため、1つの企業で複数のDXが推進・実現されても不自然ではありません。

このようにさまざまな単位や目的で行われるDXですが、なかでも今回は企業活動における「攻めの活動」と「守りの活動」の変革を目的とするDXに着目してみることにしましょう。

「攻め」と「守り」の考え方

企業活動での「攻め」や「守り」という表現は聞いたことはあるけれど、具体的にはどういうことだろうか?ウチの会社はとくに攻めたり守ったりしている印象はないのだけれど。という方も多いのではないでしょうか。

ここで「バイモーダルIT」という考え方をご紹介しましょう。

バイモーダルITではITシステムを「モード1」「モード2」の2つに分類して考えます。
なお、バイモーダルITについては以下のコラムで説明しています。

このコラムによるとモード1、モード2は次のようなイメージで表現できます。

モード1 = SoR = 記録のシステム = 守りのIT。 情報資産の蓄積・保全と活用。
モード2 = SoE = つながりのシステム = 攻めのIT。 新ビジネスの創出。

「SoR」や「SoE」など耳慣れない言葉がありますが、詳しくは前記のコラムで説明していますので、ご興味ある方はぜひご覧いただければと思います。

これを見ると、攻めと守りの順序は前後していますが「守りのIT」「攻めのIT」という言葉がありますね。

もう少しわかりやすくまとめると、このように言い換えられます。

「守りのIT」  自社が持つ情報資産をさらに蓄積し、それらを確実に守りながら活用するためのIT利用。
「攻めのIT」  新ビジネスの創出や、新規顧客の獲得を目指すためのIT利用。

これを踏まえると「守りのIT」「攻めのIT」を進化させ、事業競争力強化に向けた変革、つまりDXを目指すことが「守りのDX」、「攻めのDX」と呼ばれるものの正体いえるのではないでしょうか。

「攻めのDX」とは

「攻めのDX」の目的は成長を目指し、新ビジネスの創出や新規顧客の獲得を目指すことといえます。

厳しい現実ですが、どの企業も現状に満足することは許されません。

歴史をひも解いてみても、日本ではかの松下幸之助氏を筆頭に、海外ではウォルト・ディズニー氏、ナイチンゲール氏など、洋の東西を問わず数々の歴代の偉人が「停滞は後退」「現状維持は後退の始まり」などという意味の名言を残しています。

どうやら常に成長を目指して攻め続けることは私たちの宿命といえるかもしれません。

さて、この「攻めのDX」は比較的新しいデジタル技術との相性が良いように思えます。

クラウド、SNS、AI、ビッグデータ解析などの先進的技術、またはこれらの複合的または応用的な活用によって、新たな顧客を獲得する、もしくはこれら技術を用いて新たなビジネスを創出することと相性が良いのかもしれません。

たとえばSNSを活用した訴求による新規顧客の獲得や、AIを活用して人間には思いも寄らない事実を見つけ、新ビジネス創出につなげるなどが挙げられるでしょう。

こうした新しいデジタル技術を活用する動きは多方面で活発におこなわれています。

皆さんも関連する情報や活用事例に触れる機会も増えているのではないでしょうか。

また、いわゆる「バズワード(特にIT分野で広まる新しい考え方だが意味が定まっておらずあいまいな言葉)」に分類される考え方や技術領域が、挑戦的な意味を込めて用いられることが多いのも「攻めのIT」領域の特徴ともいえるでしょう。

いずれにせよ、DXで目指す方向の見極めや、デジタル技術の活用の妙が大切であることに変わりはないといえます。

「守りのDX」とは

「守りのDX」とは自社が持つ情報資産をさらに蓄積し、それらを確実に守りながら活用すること、と紹介しました。

一定程度の事業期間がある企業であれば、何らかの情報資産をお持ちのことと思います。

それは顧客情報かもしれませんし、取引先情報や商品情報、各種のノウハウ情報など多岐にわたり、業種業態により中味は異なりますが、どれもその企業にとっては大切な情報資産ではないでしょうか。

こうした情報資産は日々蓄積されていきます。

繰り返しになりますが、この蓄積されていく情報はその企業にとっては重要な情報資産です。これら情報資産は蓄積だけでなく、確実に守る必要があります。

情報資産を守るためには、特に情報漏洩や情報改ざんの防止に気を配る必要があるでしょう。

また情報の蓄積についても、何ら手を加えることなく情報が自然に蓄積されていくのを待つのではなく、可能であれば先々の情報活用も視野に入れ、情報資産の蓄積方法を整理・工夫したいところです。

「守りのDX」はまさに「守り」ですので、第一に意識すべきは情報資産を守ることです。くれぐれも十分安全に情報資産を守ることができてから情報資産の活用を検討されることをおすすめします。

これが本末転倒になり、情報資産の保全が不完全なまま、情報資産の活用をすすめると、やがて企業の根幹をなす信用に影響し、事業継続のリスクにも発展しかねません。

すでに手元にある情報を継続的かつ安全に蓄積し続けることを大前提としながら、そこで蓄積した情報資産を活用して自社の事業競争力強化を目指したDXを実現していく、これが「守りのDX」といわれています。

一方でそこには守りながら変革をすすめることの難しさが常につきまとうことを忘れないようにしましょう。

スモールスタート型DXはいずれにも有効

ここまで「攻めのDX」「守りのDX」についてみてきました。
この2つはDXの見方やとらえ方、解釈の1つに過ぎません。

DXの狙いや活用するデジタル技術はさまざまですが、DXを進めるにあたり直面する課題や悩みはどのDXにも共通といえます。

当社ではどのようなケースにも通じる有効なDX推進の手法として「スモールスタート型のDX」をおすすめしています。

詳しくは以下のコラムで説明していますので、ぜひこちらもご覧ください。

「攻めのための改革」や「守りのための改革」がDXの目的として設定されると、担当者は責任重大で身構えてしまうかもしれません。

そしてその気負いから、はじめから大がかりな投資や体制を想定しがちです。

では、大規模投資や体制で臨むDXは必ず成功するのでしょうか?
残念ながらそう上手くはいかないのが現実ではないでしょうか。

DXの成果は変革と変革による成果に表れるともいわれます。

大規模投資や体制によって上手く変革を実現し、成果が出た場合はよいのですが、一方でDX推進の途中で目的と手段が逆になってしまう場合も散見されるのではないでしょうか。

つまり資金と体制を投じて何らかのデジタルツールを導入すること自体がDXであるという、錯覚にも似た状況に陥ってしまう可能性も低くはないのが実態でしょう。

このような状況をさけるため、当社がおすすめするのがスモールスタート型DXです。

これは改善効果が一番大きそうな業務を小規模な単位で設定し、改善効果を確かめながら現場の成功体験を積み重ね、DXのファン(支援者や賛同者)を増やしながら、徐々にタテヨコのステークホルダー(利害関係者)を巻き込んで変革の範囲を広げ、最終的にDXの実現を目指そうという考え方です。

DXのすすめ方には正解はありません。

ぜひ自社の状況にもっとも相性の良いDXのすすめ方を見極め、皆さんのDXを成功に導いていただきたいと思います。

まとめ

今回は「攻めのDX」「守りのDX」という観点でDXをみてきました。
攻めのDXでは新たなチャンスをつかみ、守りのDXでは既存の情報資産をしっかりと守り抜き活用する。

こうした見方をすることでDXの目的も設定しやすくなるのではないかと思います。

さらに、どのようなDXにおいても有効な手法の例として、当社がおすすめするスモールスタート型DXにも触れました。

さまざまな角度からDXについて理解を深めることが、皆さんのDXを成功に導くことでしょう。

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