DXという考え方が注目されている背景には、社会情勢・経済情勢の変化にともない、企業には変化に負けず事業競争力を向上させることが求められ、従業員には新しい労働環境に適した働き方に対応することが求められていることがあるとご紹介してきました。(参考コラム「DXが必要なワケ」)
当社では着実かつ現実的にDXを進めるアプローチとして「サービス連携」をおすすめしていますが、サービス連携と並んで業務改善の成功体験を実感しやすいアプローチに「Robotic Process Automation(RPA アールピーエー))」の活用があります。
ここではサービス連携とRPAの特性の違いについて触れておきたいと思います。
目次
RPAとは
RPAは簡単にいうと、人によるPC上の画面操作を自動化できるソフトウェア(RPAの世界ではソフトウェアロボットまたは単にロボットともいう)です。
あらかじめ人が行う操作をソフトウェアロボットに覚えさせておけば、PCの画面上で自動的に人と同じように操作を実行します。人による操作を自動化できるため、繰返し作業や定型作業などを省力化・効率化できる直接的な効果があります。
しかし人間の操作を自動化するだけですので、根本的な業務プロセスの効率化や生産性向上にはつながらないこともあるでしょう。
具体例を挙げると、ソフトウェアロボットによる自動操作のパターン数が増えると、今度は正常終了確認など、その管理に追われることになります。ソフトウェアロボットで自動化した操作の処理結果を、改めて人が確認するという、業務効率化と逆行するような事態も起こり得ます。
ざんねんなRPAあるある
2019年7月12日。当社ではRPA活用における課題を「ざんねんなRPAあるある」としてプレスリリースしたことがあります。
クロス・ヘッド「ざんねんなRPAあるある」の特設ページ および関連サービスを発表
https://www.atpress.ne.jp/news/187519
※本サービスの提供はすでに終了しています
そこで挙げたのは次の5つの「あるある」です。
「ゆうれいロボット」 業務の変更に対応できず、実はロボットが動いていない。
「ロボットシッター」 ロボットがちゃんと動いているか、ついつい見守ってしまう。
「閑職ロボット」 RPAソフトを買ったものの、実は月1回業務でしか使われていない。
「殿様ロボット」 実は多くの部分を手作業で行っていて、ロボットの意味がない。
「暴走ロボット」 ロボットが急に、やらなくていいことまでやり始めてしまう。
RPAを使った経験のある方は、思い当たる「あるある」もあるのではないでしょうか。
このようなよくあるRPA活用の実態や課題を解決するため「RPA診断サービス」「RPA管理サービス」「RPA教育サービス」などを展開しました。
しかしながら、いずれも業務課題を根本的に解消することは難しいと判断し、RPA製品の取扱いをとりやめた経緯があります。
RPAとサービス連携との違い
RPAのメリットは、人が行うPC画面の操作をそのまま再現できるので動作の様子も効果も「分かりやすい」ことです。
一方デメリットは、RPA製品によっては画面上のボタンなどの表示位置が変わると対応できない場合があったり、動作するPCが必要で、動作時にはPCの電源がONになっている必要があることなどが挙げられます。また、一般にはサービス連携に比べて処理速度が遅いといわれます。
サービス連携のメリットは画面表示に左右されないので柔軟性が高いことと、物理PCを必要としないこと、クラウドサービスが活用できることなどが挙げられます。
デメリットとしてはRPAと比べると難易度が高いという点がありますが、現在ではローコード、ノーコード技術の進歩でサービス連携の活用難易度も下がりつつあります。
ただしサービス連携でもRPAでも、自由な実装を許すと管理が追い付かず、ブラックボックス化が進み、いわゆる「野良状態」となる点は同じです。本環境への適用にあたっては、窓口をもうけて一元的に審査・承認するなどのルールが必要でしょう。
DXにはどちらを選ぶべきか
サービス連携かRPAのどちらかに寄せるのではなく、双方のメリット、デメリットなどの特性を理解し使い分けることがDX成功への近道ではないでしょうか。
会社として設定した一貫した方針の下、DXに用いるシステムの全体設計を行い、業務プロセスの最適化を図りながら、全社視点で体系的に実装をすすめるにはサービス連携が向いているでしょう。一方、現場担当者の手元業務に焦点をあてて効率化する範囲であればRPAが向くかもしれません。
サービス連携やRPAの実装によって何を実現するのかという最終ゴールを設定し、その達成のためにかける時間やコストと、得られる成果のバランスを判断して選択するとよいでしょう。
繰返しになりますが、どちらを選択する場合も、一元的な管理窓口やルールを設けることをおすすめします。