目次
はじめに
「パッケージ版 Garoonのサポート終了 徹底解説」の第2回では、サポート終了後の継続利用に潜むリスクを整理しました。
サポートが終了した状況下でパッケージ版 Garoonの利用を継続すると、セキュリティや運用面での不安が高まります。特に、障害発生時の対応は、業務に大きな支障をきたすリスクも否定できません。
こうした背景を踏まえ、サイボウズ社では「クラウド版 Garoonへの移行」を推奨しています。
クラウド版では、サポート環境でGaroonを利用できるだけでなく、日々の運用負荷の軽減や外部サービスとの連携拡張など、さまざまなメリットをもたらすことでしょう。
とはいえ、「そもそもパッケージ版とクラウド版って何が違うの?」「クラウドにすると何が良くなるの?」といった疑問や不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
今回は、「パッケージ版 Garoonのサポート終了 徹底解説」の第3回として、パッケージ版とクラウド版の違いを整理し、クラウド移行によって期待されるメリットや、移行前に確認しておきたいポイントについてご紹介します。
なにが違う?パッケージ版とクラウド版の比較
Garoonには「パッケージ版」と「クラウド版」の2つの提供形態があります。
両者の違いは単なる提供形態の違いにとどまらず、機能や費用、セキュリティ対応、メンテナンス性など、さまざまな面に及びます。
本章では、パッケージ版とクラウド版の違いを整理しながら、クラウド版への理解を深めていきます。
Garoonの導入や運用面の違いを比較
はじめに、導入や運用面での違いを整理します。
以下の比較表では、導入・運用面における主な違いを整理しています。
項目 | クラウド版 Garoon | パッケージ版 Garoon |
導入方法 | インターネットから申し込み後すぐに利用開始 | 自社サーバーにインストール。事前の環境構築が必要 |
初期費用 | 不要。月額/年額のライセンス費のみ | ライセンス費に加え、ハードウェア・構築費などが別途必要 |
メンテナンス | サイボウズ社が対応。自動アップデート・バックアップあり | 自社で対応。手動でアップデートやバックアップを実施 |
アップデート | 毎月の定期メンテナンスで自動アップデートされ、常に最新機能が利用可能 | バージョンアップや不具合修正のためのプログラムを手動適用 |
バックアップ | サイボウズのデータセンターで自動バックアップ | 自社でバックアップシステムの構築が必要 |
社外からのアクセス | インターネットがあれば外部アクセス可能 | アクセスするためのVPN構築などが別途必要 |
パッケージ版は、自社のサーバーにGaroonをインストールして利用する形態です。
事前にサーバー構築やネットワーク設定が必要となるため、IT部門による技術的な対応が求められるでしょう。
導入後は、セキュリティ対策やバージョンアップ、バックアップなどのメンテナンス作業を自社で継続的に行う必要があります。
これらの対応が自社で難しい場合は、サイボウズ認定資格である「SC-Garoon」を保有するサイボウズ認定パートナー企業に依頼するケースも多く見受けられます。
※SC-Garoonとは パッケージ版 Garoonのシステム構築およびシステムサポートに必要なスキルを保有したスペシャリストを認定するサイボウズ社の公式資格です。 |
一方、クラウド版は、サイボウズ社が運用するクラウド基盤上でサービスを利用する形態です。
利用者側がサーバーを構築・管理する必要はなく、インターネット環境があればすぐに利用を開始できます。導入時の初期設定もパッケージ版に比べてシンプルなため、技術的な知識が豊富になくても導入しやすい点が特徴です。
運用面では、バージョンアップやセキュリティ対応、バックアップなどをサイボウズ社が継続的に維持管理するため、自社でのメンテナンスは不要になります。
このように、自社での維持管理と運用が求められるパッケージ版に対し、クラウド版はサイボウズ社がそれらを担うことで、自社の負担を大きく軽減できる点が大きな違いといえます。
Garoonの機能面の違いを比較
次は「機能面」に注目してみましょう。
Garoonのスケジュールや掲示板、ワークフローといった基本的な機能は、パッケージ版・クラウド版のどちらでも利用することが可能です。
では、機能面ではどのような違いがあるのでしょうか。
以下は、パッケージ版とクラウド版における主な機能の違いをまとめた比較表です。
項目 | クラウド版 Garoon | パッケージ版 Garoon |
全文検索 | Garoon内の複数アプリケーションを横断して検索可能 | 利用不可 |
kintone連携 | 連携可能 | 連携不可 |
プラグイン | Microsoft 365などとの連携を含む機能拡張が可能 | 利用不可 |
SSO(シングルサインオン) | SAML認証機能に対応 | LDAP連携に対応 |
不正アクセス防止 | 2要素認証、クライアント証明書による認証、IPアドレス制限など多層的な対策が可能 | IPアドレス制限によるアクセス管理が可能 |
プッシュ通知(クラウド版 Garoon モバイル) | モバイルでプッシュ通知が利用可能 | モバイル利用は可能だが、プッシュ通知は非対応 |
この中でも、全文検索・kintone連携・プラグインによる機能拡張は、クラウド版ならではの特徴として注目されています。
次章では、クラウド移行によって得られる具体的なメリットについて整理します。
クラウド移行はメリットがたくさんある?
パッケージ版との違いを整理することで、クラウド版が持つ利便性や拡張性について、より具体的なイメージを持っていただけたかと思います。
続いては、クラウド版へ移行することで期待されるメリットについて見ていきましょう。
Garoonの”クラウド移行”とは
Garoonのクラウド移行に注目する理由には、「サイボウズ社がクラウド版への移行を推奨している」といった背景があります。
「クラウド移行」とは、自社サーバーで運用していたGaroonを、サイボウズ社が運用するクラウド版 Garoonへ移行することを指します。
自社サーバー環境に蓄積されたデータや設定情報をクラウド版に引き継ぐ作業も含まれるため、計画的な準備が必要になるケースもあるとされています。
クラウド移行によって期待されるメリット
では、クラウド移行によって期待できるメリットについて整理していきましょう。
以下の表は、クラウド版 Garoonへの移行を検討する際に、運用面と機能面の各観点からメリットを整理したものです。
メリット | 内容 | |
運用面 | 運用コスト・負担の軽減 | サーバーの設置・保守・障害対応などが不要となり、IT部門の運用コストや業務負荷が軽減 |
データの安全性向上 | サイボウズ社が提供するクラウド環境では、最新のセキュリティ対策が適用されるため、情報漏洩や障害リスクの低減につながる | |
バージョンアップ自動化 | クラウド版では、アップデートが自動で行われるため、追加費用なしで最新の機能を利用できる | |
機能面
|
リモート対応力の向上 | インターネット環境があればどこからでもアクセス可能なため、テレワークや外出先での業務にも柔軟に対応可能 |
情報検索の効率化と精度向上 | Garoon内の情報を横断的に検索できる全文検索機能が提供されているため、必要な情報に素早くたどり着ける | |
他システム連携による拡張 | kintoneとの連携や、サードパーティ製プラグインの活用により、Garoonの機能を柔軟に拡張でき、選択肢が広がる |
サーバー管理の手間を軽減できる
物理サーバーの設置や保守、障害対応といった作業が不要になります。
これにより、IT部門の業務負荷が軽減され、インフラ管理にかかるコストや時間を他の業務に充てることが可能になります。
特に、サーバー障害時の対応や定期メンテナンスに追われていた企業にとっては、大きなメリットといえるでしょう。
セキュリティ対策の強化によるデータの安全性向上
サイボウズ社が最新のセキュリティ対策を適用しているため、情報漏洩やシステム障害のリスクを低減できます。定期的な脆弱性対応などの自社で対応するには負担の大きい対策が標準で提供されます。
セキュリティポリシーが厳しい業界でも、安心して利用できる環境が整っている点はクラウド版の大きな強みです。
自動アップデートで常に最新の環境に
Garoonのアップデートが自動で行われるため、常に最新機能を利用できます。
また、バージョンアップのたびに検証作業や適用作業を実施する必要がなく、運用の効率化につながることでしょう。
最新機能の活用もスムーズになり、業務改善のスピード向上も期待できます。
テレワークや外出先でも利用できる
インターネット環境があれば社外からでもアクセス可能です。
VPNなどの特別な接続環境を用意する必要がないため、導入のハードルも低く、スムーズな運用が可能です。
これにより、テレワークや外出先での業務にも柔軟に対応でき、働き方の多様化を支援します。
情報検索がスムーズになる
Garoon内の情報を横断的に検索できる「全文検索機能」が提供されています。
- スペース
- メッセージ
- 掲示板
- ファイル管理
などの情報を一括で検索でき、必要な情報に素早くアクセスできます。
全文検索の活用により業務のスピードや精度を高めることにつながるでしょう。
他システムとの連携で業務を拡張できる
kintoneとの連携やMicrosoft 365などとのプラグイン連携が可能となり、Garoon単体では実現が難しい機能や業務フローの拡張が期待できます。
クロス・ヘッドが提供する「CROSSLink Grワークフロー連携」では、kintoneで管理している案件情報をGaroonのワークフローと連携させることで、案件情報を反映したワークフロー申請が可能になります。
これにより、入力の手間やミスを削減できます。
CROSSLink Grワークフロー連携
https://www.crosshead.co.jp/solution/garoonwork_kintone/
「CROSSLink 365 Teams連携」では、Garoonのスケジュール登録時にTeams予定表にオンライン会議情報を自動連携することができ、Garoonのスケジュール詳細画面からWeb会議に参加することが可能になります。
スケジュールの二重登録作業が不要になり、日々の業務負荷の軽減につながることでしょう。
CROSSLink 365 Teams連携
https://www.crosshead.co.jp/solution/garoon_teams/
このように、クラウド版には、業務効率化やシステム連携の柔軟性など、パッケージ版にはない様々なメリットがあります。
クラウド移行を進める前に知っておきたいこと
ここまでお読みいただいた皆さまの中には「クラウド移行を前向きに検討してみようかな」と感じ始めた方もいらっしゃると思います。
本章では、移行を進めるうえで事前に確認しておきたいポイントについて整理します。
最初に確認しておきたい技術的な条件
クラウド移行においては、まず技術的な条件について確認しておくことが重要とされています。
利用状況によって条件が異なる部分もありますが、ここでは主なポイントとして「最新版へのバージョンアップ」と「中間サーバーの準備」について触れていきます。
Garoonを最新版へバージョンアップする
クラウド移行するには、サイボウズ社が提供する「移行ツール」の利用が必須となります。
「移行ツール」を利用するためには、パッケージ版 Garoon が最新版(Garoon 6.x)である必要があります。
現在のバージョンを確認し、バージョンアップが必要かを把握しておきましょう。
現在利用中のGaroonが最新版ではない場合、クラウド移行前にバージョンアップ作業が必要になるため、余裕を持ったスケジュールで進めることが望ましいでしょう。
中間サーバーを準備する
パッケージ版からクラウド版へデータを安全かつ確実に移行するために「中間サーバー」の準備をおすすめします。
中間サーバーとは、現行の環境に影響を与えることなく、移行ツールによるクラウド移行を安全に実行する環境を整えたサーバーで、重要な役割を持ちます。
中間サーバーの準備を含む移行前の準備には一定の技術的な知見が求められるため、社内のIT部門が主体となって進めるケースが多く見受けられます。
クラウド移行で変わること
「クラウド移行後に何が変わるのか」を事前に把握することで、移行後に起こり得るユーザーの混乱や業務への影響を抑えられるでしょう。
併せて、以下の点について社内で調整を進めておくことをおすすめします。
業務影響の洗い出し
パッケージ版でグループメールを利用している場合や、社内システムと連携してGaroonを利用している場合は、クラウド版で利用できなくなることが予想されます。
利用できなくなる機能がどの業務に影響するかを事前に洗い出し、必要に応じて代替手段(例:メールワイズやプラグインの導入)を検討するのもよいのではないでしょうか。
ユーザー教育と社内周知
操作性が大きく変わらないとはいえ、細かな仕様変更や機能の追加により、ユーザーが戸惑う場面も想定されます。
FAQ(よくある質問と回答)の整備や、簡単な操作説明資料の作成など、社内向けのサポート体制を整えておくと安心です。
新機能の活用計画
全文検索やプラグイン連携など、クラウド版ならではの機能をどう活用するかを社内で共有しておくと、クラウド移行と同時に業務改善にもつなげることができるでしょう。
データ移行範囲はどこまで?
現在のデータ容量や移行対象のデータ範囲を確認しておくことも、クラウド移行をスムーズに進めるうえで重要になるとされています。
データ量が多い場合、移行時間が増加する傾向にあり、それに伴って作業費用の追加につながる可能性もあるため、あらかじめ把握しておくと良いでしょう。
また、Garoonのデータ量が500GBを超える場合には、サイボウズ社にデータ移行作業を別途依頼する必要があり、スケジュールや予算面での調整が求められることもあります。
現状のデータをすべて移行するのではなく、業務に必要な範囲を整理し、あらかじめ不要なデータを削減することで、移行時間や作業費用の削減につながると考えられます。
社内調整はどう進める?スケジュール管理のコツ
クラウド移行を進める際には、社内調整やスケジュール管理にも配慮が必要になる場面があるようです。特に全社でGaroonを利用している場合は、業務への影響を抑えるための工夫が求められることもあるかもしれません。
社内調整については、事前に対象部門や影響範囲を明記した社内通知を出しておくとよいでしょう。
通知内容には、移行日程や利用制限の有無、変更点の概要などを含めておくと社内での混乱を減らすことにつながります。
また、他システムの更新や社内イベントと移行作業日が重ならないよう、全体スケジュールを俯瞰して調整しておくのもおすすめです。
準備からクラウド移行までプロと一緒に進めたい!
クラウド移行にあたって「社内だけで進めるのは難しそう」「どこから手をつければいいかわからない」と感じてなかなか計画が進まないケースもあるかもしれません。
そのような場合は、サイボウズ社認定のパートナー企業に相談することをおすすめします。
移行に関する豊富な知見や実績を持つパートナー企業であれば、現行環境の調査・整理から移行計画の立案、クラウド版 Garoonでの運用支援まで幅広くサポートを受けることができるでしょう。
社内リソースやスケジュールに不安がある場合は、移行支援を提供しているパートナー企業に相談することでスムーズな移行が期待されます。
サイボウズパートナーネットワーク
https://partner.cybozu.co.jp/
最後に
今回は、パッケージ版 Garoonとクラウド版 Garoonの比較から、クラウド移行によって期待されるメリットと移行前に確認しておきたいポイントを整理してご紹介しました。
次回は、クラウド移行を進める際に気になる「費用とスケジュール」について詳しくご紹介する予定です。
クラウド移行にかかる主な費用項目や、スケジュールの目安など、実際の計画に役立つ情報をお届けしますので、ぜひご覧ください!
お役立ち資料のご紹介
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著者
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クロス・ヘッドはサイボウズ社のコンサルティング&プロダクトパートナーです。
クロス・ヘッドは、サイボウズ社認定のオフィシャルパートナーとして認定されており、2005年以来のサイボウズ社製品の取り扱い実績を有しています。また、サイボウズが設定しているパートナー評価制度「Cybozu Partner Network Report」にてインテグレーション部門2つ星を4年連続受賞。豊富な実績をもとに、様々なお客様ニーズにお応えします。弊社以外で導入されたお客様へのサービス提供も可能です。
※クロス・ヘッドはサイボウズ社のオフィシャルパートナーです。