DX実現を目指し、大きく構えて自社基幹システムの再構築プロジェクトを進める企業も増えていますが、その一方でプロジェクト失敗による決して少なくはないIT投資の損失計上例も数多く報じられています。
こうした事例から今、現場主導でローコード開発ツールを用いたスモールスタートでのDXが着目されています。当社でもサイボウズ社kintoneを用いたDX推進の支援サービス「kintone de かんたんDX」をご提供しています。
こうした「かんたんDX」の中でも、最も身近で気軽に着手できるのがエクセル利用の見直し(脱エクセル)ではないでしょうか。
今回は脱エクセルからのDXはじめの一歩についてみていきたいと思います。
目次
エクセル利用のイライラあるある
みなさんはワード、エクセル、パワーポイントの主要オフィスソフト3種のうち、どれを最もよくご利用されているでしょうか。
あくまで想像ですが、利用頻度はエクセルが一番多いのではないかと思います。
エクセルは表計算ソフトですが、その使い勝手の良さから、ドキュメント作成やデザイン作成に至るまで、あらゆる用途に利用されています。
もっとも、エクセル開発時には表計算以外の用途は想定されていなかったのでしょうが、人間のアイデアや創意工夫というのは素晴らしいもので、あっという間に、ある意味で想定外の使われ方をするようになりました。
そんな万能ソフトとも言えるエクセルですが、一方でさまざまな用途での利用が進めば進むほど「イライラポイント」も生じているのではないでしょうか。
たとえばこんなイライラはありませんか?
● 複数ユーザーで同時編集(保存)ができない
● 行や列を追加すると計算式がずれる
● データ量が増えるにつれ重くなったり固まったりする
● 業務が増えるとワークシートやブック間の転記が発生
● なぜか計算が合わず何が原因がわからない
● 力技で芸術的な入力フォーマットを作ったが1項目増えるだけでも修正が大変
● どれが最新のファイルかわからない
● ワークシートが保護されているが設定内容がわからない
● 複雑なアクセス権が設定できない
● マクロは便利だが知見が属人化していて修正できない
●スマホやタブレットからの入力が不便
● どのセルをいつ誰が更新したかわからない
● いつの間にか列が増えている
● 数字入力セルに文字が入力されてしまう
これらのうち、一部のイライラはエクセルの設定などによってある程度は回避できるでしょう。
一方、そもそもエクセルは個人が表計算ソフトとして利用することを前提として開発されたソフトウェアですので、リストに挙げたようなイライラにつながる利用は想定されていなかったはずです。
そのため多少のイライラはありますが、エクセルの本来機能としては至極正しく動作しているともいえるのではないでしょうか。
どうする?エクセル利用の不満
もしかすると私を含む多くのみなさんはエクセルに対する期待が大きすぎるが故に、先ほどのリストに挙げたような不満を持たれているのかもしれません。
ですが、元々想定された表計算以外の利用については、おそらくエクセルの提供開始時には想定されていなかったのではないでしょうか。
筆者はエクセルの開発元であるマイクロソフト社とは何ら関係ありませんが、エクセル自体は素晴らしい機能を提供してくれる表計算ソフトに変わりないことはみなさんご理解いただけることでしょう。
さて、エクセルがあまりに素晴らしい機能を持つが故に「無いものねだり」をしてしまっているのが今の状況ともいえるかもしれません。
エクセルの利用が進み、みなさんが創意工夫を重ねていくと、先ほどのリストのような、どうしてもエクセルでは実現が難しい不満が出てきてしまいます。
そんなエクセルでの実現が難しい不満のうち、先ほどのリストから最初の3つをピックアップしてみていきましょう。
複数ユーザーで同時編集(保存)ができない
これは代表的な不満ポイントではないでしょうか。
ご存知の方も多いと思いますが「ブックの共有」設定をすれば複数ユーザーで編集ができるようになります。
しかしながら、さまざまなエクセルの設定をしなければこの機能を有効にすることはできません。
また、共有を有効にできたとしても、今度はその代わりに使用できなくなる機能がでてきます。
そのため多くの方々はエクセルファイルを開こうとして「読み取り専用で開いてください」というダイアログ表示を目にすることになり、「誰ですか!エクセルのファイルを開いたままにしているのは!」と、声には出さないまでもイライラするのです。
行や列を追加すると計算式がずれる
エクセルのセルに計算式を埋め込んでいる場合に、必要に応じて計算式でセルを絶対参照などにしていないと、行や列の追加・削除をしたときに計算式が意図しないセルを参照するようになり、計算式を見直さなければならなくなってしまいます。
このとき、どのセルの計算式を修正すればよいか、分かっている場合は渋々でも計算式を修正すればよいのですが、もし修正箇所が分からないときには、イライラが最高潮に達してしまうこともあるでしょう。
修正箇所が見つかるまで、地道に1セルずつ埋め込まれた計算式を確認していくことになります。
さらに辛いのは、どのセルに計算式が埋め込まれているかすら分からない場合です。
この場合はすべてのセルについて1つ1つ、計算式の有無や、計算式の誤りの有無を確認していく必要があります。
データ量が増えるにつれ重くなったり固まったりする
これはエクセルを表計算ソフトとして正しく利用している場合に起こりがちなイライラです。
エクセルは非常に便利なソフトウェアですが、データ量(行数や列数)を無限に増やすことはできません。
エクセルの1ワークシートの限界行数と列数は、それぞれ1,048,576行、16,384列です。
その他にもさまざまな限界がありますので、詳しくはマイクロソフト社の情報をご確認ください。
ここで気を付けなければならないのは、マイクロソフト社からの情報はエクセル自体のソフトウェアとしての仕様や制限であるということです。
ソフトウェアとしての仕様や制限と、みなさんのパソコンなどの作業環境の限界は異なります。
イライラあるあるとして挙げられる場合の多くは、みなさんの作業環境に依存することが多いです。
例えば、エクセルでワークシートAにある数万行のデータを、ワークシートBにコピーしようとします。すると、作業環境によっては、コピーを指定してからしばらくの間、エクセルが「固まった」ように感じることもあるかもしれません。
実はこのときもエクセルは固まっておらず、頑張ってデータコピーをしているのですが、コピーをしている間の数秒~数十秒にわたしたちは我慢できず、イライラしてしまうのです。
さて、ここまで「イライラあるある」を3つだけですがご紹介してきました。
みなさんも似たような状況をご経験される機会もあると思いますので、同意いただける方も多いのではないでしょうか。
エクセル利用の不満解消術
ここまでエクセルは高機能かつ利便性の高いソフトウェアであるということと、それが故に用途が多様化し、さまざまなイライラも生じていることをみてきました。
では次に、そんなイライラ(不満)を解消するにはどうすればよいか、みていきましょう。
本コラムの冒頭で「現場主導でローコード開発ツールを用いたスモールスタートでのDXが着目されています」とご紹介しました。
数あるローコード開発ツールの中でも、当社ではサイボウズ社のkintone(キントーン)を用いたスモールスタートでのDXをおすすめしています。
上記のコラムではkintoneとは何かについてもご紹介していますので、kintoneを初めてお知りになる方はこちらのコラムからご覧いただくとよいかもしれません。
kintoneはクラウド環境で動作する月額課金型のサービスで、利用者はWEBブラウザを介してアクセスすることになります。
また、kintoneはサービス開始当初から複数メンバーでデータを共有利用することを前提としてサービス設計されています。
そのため先ほど見た、複数メンバーでの編集はスムーズに行うことができます。
また、kintoneは「フィールド」と呼ぶ表示や入力を行うエリアを自由に配置でき、計算式が参照するフィールドが削除される場合を除き、フィールドの追加や削除によって、他のフィールドの計算式に影響することもありません。
一方、作業環境に依存すると説明した、データ量の増加によるイライラについては、依存するポイントがエクセルとは変わってきます。
エクセル利用の場合はエクセルを動作させるパソコンの処理速度やメモリ容量に依存することが多いのですが、kintoneの場合はクラウド環境を利用するため、通信環境に依存します。
もしkintoneで大量のデータを扱いたい場合には、作業場所となるオフィスや自宅などの通信環境を確かめておくとよいかもしれません。
サイボウズ社では企業でのkintoneを活用した脱エクセル事例を冊子にして提供しています。
「kintone 脱エクセル ユーザー事例6選」
https://kintone.cybozu.co.jp/material/pdf/casebook_excel.pdf
この冊子では6つの企業がkintoneを使って脱エクセルを果たし、エクセル利用する上での課題を克服した事例が掲載されています。
ぜひ一度ご覧になって、脱エクセルの成功イメージを具体化していただければと思います。
脱エクセルに向けkintoneを使いこなす
kintoneは現場のみなさんが自らの手で脱エクセルをはじめとする業務改善を実現できるツールです。
このように、専門開発業者に依頼することなく、自分たちの手で、自分たちが使い勝手の良いアプリケーションを開発できるツールは「ローコード開発ツール」「ノーコード開発ツール」と呼ばれます。
「ローコード開発ツール」は簡易なプログラミングが必要なツール。「ノーコード開発ツール」はプログラミングがまったく必要のないツールを指します。
少し前までアプリケーション開発は専門開発業者に任せることがほとんどでした。
ところがここ数年でローコード開発ツールやノーコード開発ツールが多数現れ、急速にその利用が進んでいます。
kintoneはローコード開発ツールに分類されています。
実現機能の自由度では、以前からのイチから開発する専門開発業者にすべてをお任せする開発(スクラッチ開発)が一番です。次にローコード開発ツール。最後はノーコード開発ツールです。
そもそもプログラミングというのは、実現したい機能をコンピュータに実行させるための「言語」ですので、言語記載の自由度がそのまま実現機能の自由度につながります。
さて話をkintoneに戻すと、さきほど少し触れましたがkintoneはドラッグアンドドロップでフィールドを自由に配置し、フィールドに計算式を埋め込んだりすることができます。
使いこなせば実現したい機能を概ね実現できるかもしれません。
しかしながら、エクセルと同じで、kintoneを使いこなすほどに創意工夫が生まれ、アレコレと実現したい機能が増えてきます。
その際に考えるべき選択肢は次の2つではないでしょうか。
1. kintoneの機能をとことん勉強する
2. ある程度までは自ら理解し、それ以上はkintoneの専門家に任せる
どちらも良い選択肢と思います。
上記1のメリットは何といっても納得感のあるアプリケーションを作成することができることでしょう。一方でkintoneも奥が深いツールなので、どこかで技術的な壁にぶつかることもあるかもしれません。
上記2の場合は、本来の目的を意識した選択と言えるでしょう。
kintoneを使った脱エクセルはそれ自体が目的ではありません。
脱エクセルによって業務改善を図り、最終的にはDXまで視野に入れることが本来の目的といえます。
その観点から、kintoneの機能をある程度把握し、kintoneの限界も知ることに軸足を置いた選択といえるかもしれません。
専門家に依頼するときにも、kintoneの機能性を良く理解することで要件を明確にすることができ、認識のずれも少なくなることが期待できるでしょう。
多くの企業では業務改善やDXを推進するリソースにも限りがあるでしょうから、ある一定のレベルまでは自社で把握し、kintoneの軽微な開発までは行った上で、それ以上の活用指南は専門家に任せるのがもっとも効率的な選択といえるかもしれません。
誰に任せるべきか
ではkintoneでの脱エクセルを進めるとき、誰に任せるべきでしょうか。
当社ではkintoneを使いこなし、kintoneを用いたお客様のDX推進を支援するサービスとして「kintone de かんたんDX」をご提供しています。
kintone de かんたんDXは、スモールスタートで、確実に、効果を確かめながら現場の成功体験を積み重ね、DXのファン(支援者や賛同者)を増やしながら、徐々にタテヨコのステークホルダー(利害関係者)を巻き込んで変革の範囲を広げ、最終的に自社のDX実現を目指すことを目的としています。
コラム冒頭で触れたように、大きな投資や体制でDXに臨んでも、対象範囲が広く、それが故に機能要件が固められず、予算や納期が肥大化して最終的にDXプロジェクトを中止する企業が後を絶たちません。
kintone de かんたんDXはそれとは真逆のアプローチをとります。
まず最も課題が大きく、ボトルネックと思われる現場業務を特定し、それをさらにかんたんに実現できる大きさまで細分化し、kintoneを用いてスモールスタートでその業務を改善することから始めます。
ボトルネックが真の課題であればあるほど改善効果は高くなり、次の改善へのモチベーションにつながります。
kintoneを用いてこうした小さな改善を重ねていくことで、関わる利害関係者(ステークホルダー)の意識が変わっていきます。つまり成功体験による意識改革が進んでいきます。
DXの実現には関わるすべての人々の心と身体の参画が欠かせません。
kintoneを用いて脱エクセルから始めることで成功体験を重ね、現場担当者の主体的な活動によるDXにつなげることができるのではないでしょうか。
当社ではこれを「DXの大衆化・民主化」と呼んでいます。
さて、kintone de かんたんDXでは3つのプランをご用意しています。
● 「ぴたっとプラン」 脱エクセル支援定額開発プラン
● 「さくっとプラン」 内製化支援プラン
● 「まるっとプラン」 請負型開発支援プラン
本コラムに該当するのは「ぴたっとプラン」になりますが、相談ベースで最終的な内製化開発を支援する「さくっとプラン」や、従来型のすべて当社にお任せいただく請負開発の「まるっとプラン」をご用意しています。
ご要望に合わせお選びいただければと思います。
まとめ
今回は脱エクセルを切り口としたDXへの第一歩についてみてきました。
エクセルは多機能でみなさんからの期待も高く、それが故にイライラが募る状況となっているといえるかもしれません。
そしてエクセルを補うローコード開発ツールとしてkintoneをご紹介しました。
kintoneを用いる最大のメリットは「チーム業務の促進」といえます。
複数メンバーで同じデータにアクセスしたり、スマートフォンやタブレットを用いて外出先からのデータアクセスも実現できます。
さらにそのkintoneを使いこなすポイントもご紹介しました。
当社が提供する「kintone de かんたんDX」をはじめ、DXが目指す本来の目的を見失うことなく、上手にツールやサービスの選択ができれば、みなさんのDXも一層成功に近づくことでしょう。