このところ頻繁に報じられる他社のサイバー攻撃、周りに同じ業務を行っている同僚がいないが故の孤独感、どんどん増えていく、分かっているようで分かっていないSaaS製品…
ふとした瞬間、対応中の業務が「これで合っているのか?」不安になった経験はありませんか?
ペーパーレス化やDX推進、リモートワークの普及により、数年前よりも情シス業務は業務範囲が広がり、重要度も高まっています。
そんななか、相談相手がいないひとり情シスや、情シスの専任ではなく多少ITに詳しいという理由だけで対応を任されている方も多いと思います。
そのような環境では、自社で進めている情シス業務や方針が他社と比較して正しく進められているのか、不安を感じる場面もあるのではないでしょうか。
このように情シス業務に対して必要以上の不安を抱え続け、軸がないままに運用が積み上がり迷走状態の、いわば「情シス迷子」からどのように脱却すれば良いのでしょうか?
一緒に考えていきましょう。
目次
情シスが不安になりやすい4つの理由
はじめに、なぜ自社で進めている情シス業務や方針が「これで合っているのか?」と不安に感じてしまうのか、考えていきましょう。

① 体制が変わらず業務が属人化し、自己流運用になりがち
典型的な不安ポイント
・業務過多により、見直しや改善の時間がなく、気づけば情シス担当者の「自己流」に頼っている
・属人化により、誰も全体像を把握できていない
IT技術者の不足により、情シス担当者は慢性的に不足しているケースが多いです。
そのため最低人数、場合によっては情シス担当者が企業規模に対して不足した状態で業務を遂行している企業が多く見られます。
この情シス担当者不足のなかでも業務は対応していかなければなりません。
その場合、日々目の前の対応で精一杯となってしまい、業務改善まで気が回らなかったり、何のためにこの業務を行っているのかも分からない「ただ手を動かすだけ」の状態に陥る可能性があります。
こうした環境では、「この設定で良いのだろうか?」「本当はもっと良い方法があるのでは?」と不安を抱きやすくなりがちです。
② SaaS製品の導入が急増しているのに、使いこなせていない
典型的な不安ポイント
・導入後、初期設定のままになっている
・機能が多すぎて、どれを使うべきか判断できない
・ベンダーなどに言われるままに導入してしまい、最適な使い方が不明
SaaS製品は、導入して終わりではなく、利用者が実際に業務の中で利便性を感じられるように設定・運用して初めて真価を発揮します。
一方で、近年はSaaSの導入数が急激に増え、ひとつひとつのサービスにかけられる時間が少なくなっています。
簡易なUIや機能で直感的に分かるものもありますが、一方で、機能が豊富だったり、複雑なUIによって使いこなすのが難しいSaaS製品も少なくありません。
本来であれば、最適な設定を調べたり、機能を理解したうえで使いこなしたいところですが、日々の業務に追われると、初期設定のまま運用しているケースが見受けられます。
こうした状況が続くと、「この設定で本当にいいのだろうか?」「このSaaSの本当の価値を引き出せていないのでは?」という不安が次第に積み重なりやすいです。
特にセキュリティに関わる設定に不安がが残っていると、担当者にとっては精神的な負荷にもつながりやすいでしょう。
③ セキュリティ要件は毎年複雑化するが把握しきれない
典型的な不安ポイント
・MFA(多要素認証)・ゼロトラスト・ログ管理など、新しい概念が毎年出てくる
・法令やガイドラインの更新頻度が上がっている
・取引先や客先から「セキュリティチェックシート」を求められるが答えられない
サイバー攻撃は年々高度化し、新しい手法が次々と登場しています。
それに合わせて、企業に求められるセキュリティ対策も複雑化し続けています。
社内外問わずセキュリティに対する要求も年々ボリュームが増えており、対応する側である情シス担当者の負荷や知識のアップデートも求められています。
一方で、セキュリティ対策には「完璧」はありません。
常に改善し続ける必要があり、しかもその基準は毎年変化します。負荷は増えるのに、どこまでやれば十分なのかが見えない――この構造こそが、情シス担当者に大きな不安を与える理由になっているでしょう。
④ 「正解」が分かりにくい
典型的な不安ポイント
・どのような運用が一般的なのか判断できない
・「最低限どこまでやれば良いの?」の答えがない
情シス業務は企業ごとに業務内容が異なりベンチマーク先や競合他社が設定しにくいため、自分たちのやり方が「正しい」のか判断することが難しいです。
企業ごとに業務フローや使っているツールが異なり、情報もあまり公開されないため、「一般的に何が正しい運用なのか」を知ること自体が難しい構造になっています。
「問題なく動いているから大丈夫」と仮に内部評価を得ていたとしても、それが本当に最適な運用なのか、業界水準に達しているのかは判断しづらいのが現実でしょう。
そのなかで、判断軸がないまま運用を続けざるを得ない状況は、情シス担当者にとって大きな不安につながりやすいです。
以上の4つが「情シス迷子」に陥りやすい主な要因と考えられます。皆さんも共感できる内容があるのではないでしょうか?
なぜ不安を感じてしまうのか、その構造についてご紹介したので、次に「情シス迷子」が実務レベルでどのような「症状」になって現れるのかを考えていきましょう。
情シス不安の典型的な症状
情シス担当者が「これで合っているのか?」と不安を感じるとき、その前兆として多くの企業で日常的に現れる症状があります。
以下は、多くの企業で見られる典型的な症状です。

・担当者の「自己流」がそのまま組織のルールになっている
「なぜこの設定なのか」「誰が決めたのか」が曖昧なまま運用され、意図が不明確なのに、ルールとして踏襲されている状態。
・セキュリティリスクを適切に判断できず、「やっているつもり」になっている
思い付きレベルでの設定変更は実施するが、変更の影響やリスクの度合いが説明できず、安全かどうかの判断が不十分なまま作業を進めてしまう。
・SaaS製品を導入したものの、設定の最適解が分からない
機能が豊富であったり設定方法が複雑なので、どの設定を有効にすべきか判断できず、導入時の設定のまま「とりあえず使っている」状態。
・各ツールの設定が本当に正しいのか自信が持てない
問題なく動作しているように見えているが、最適化されているかどうかは分からず、常にモヤモヤとした不安がある。
・一般的な運用水準が分からず、自社のレベル感を判断できない
「うちの設定は他社と比べて普通?」「もっと良いやり方がある?」といった比較軸がなく、最適運用の基準が見えない状態。
これらの症状が重なるほど、「情シス迷子」が生まれやすい環境になっていきます。
さらに、情シス担当者に不安を与える要因は、情シス業務を取り巻く構造にもあります。
忙しいほどハマりやすい、情シス運用の構造的な「罠」
情シスの不安は、個々の担当者の資質によるものではなく、運用や組織の構造が「罠」となって発生することが多いです。
これは特定の国や業界に限らず、どの企業でも起こりうる普遍的な課題でしょう。
では次に、不安を生み出す「罠」のパターンを簡潔に整理していきます。
・ツール導入=対策完了と思い込む罠
導入直後の初期設定で安心し、運用設計・見直し・検証が後回しになる。
その結果、設定に抜け漏れがあっても見直しもされないので、ツールの良さを引き出さずに利用し続けている。
・全体設計のないツール導入でツールが増殖する罠
目の前の課題を個別ツールで解決し続け、全体設計がないまま導入が積み重なる。
運用がツール毎に分断され、誰も全体像を理解していない。
・属人化・ブラックボックス化の罠
「その人しか分からない設定」「意図が不明確なルール」が固定化。
ドキュメントや引き継ぎがなく、業務改善・標準化のきっかけを失う。
・「守り」に寄りすぎて意思決定の機会を逃す罠
セキュリティ不安から「現状維持」の選択が増え、結果的に「これまで通り」で運用される。
適切なタイミングでの投資判断が遅れ、将来コストとリスクが膨らむ。
・最小限の基準を定義しない罠
「最低限ここまで」のラインが曖昧なため、都度感覚的な判断になり、現場に負荷が集中。
結果として「やっているつもり」の施策が増える。
・運用の見える化・棚卸しを先送りする罠
ライセンス・権限・デバイス・ログなどの棚卸しが行われず、現状が把握できない。
可視化できていないので、最適化もできない。
・更新を継続できない罠
仕様変更・法改正・新機能追加に追従できず、半年前の「正解」が現行では「リスク」になっていることに気が付かない。
改善が行き当たりばったりで、プロセス化されていない。

これらの「罠」は、忙しい現場ほど無意識に積み重なります。
そして「罠」が積み重なるほど、情シス担当者は不安に駆られ、その不安から抜け出せない「情シス迷子」となってしまうでしょう。
次の章では、皆さんがそんな「情シス迷子」に陥っていないか、短時間で現状を可視化できる「自己診断チェック」をご用意しました。
皆さんの情シス環境にどのような症状が出ているのか、よろしければチェックしてみてください。
まずは現状把握から:情シス業務を棚卸し!自己診断チェック12問
あなたの会社は今どのような状態にあるのでしょうか?
以下の12問で現状を簡単にチェックしてみましょう。
【あなたは「情シス迷子」? 該当する項目に✔!】
運用管理
退職者アカウントの残存、付与権限の放置などが起きやすい状態になっている。
どこで何を誰が管理しているのか、ひと目で分からない。
セキュリティ
「導入=完了」になっており、導入してから一度も見直しがされていない。
対応フローが決まっておらず、インシデント発生時の初動対応が属人的になっている。
最新情報が分からず、監査からも指摘を受けたことがある。
標準化・属人化
担当者の不在や退職による情シス業務の混乱が予想できる。
ドキュメント不足などで、担当者の頭の中にしか設計意図などが入っておらず、改善・引き継ぎが難しい。
業務プロセス
入退社の管理がシステム化できておらず、ヒューマンエラーが発生しやすい。
全体設計ができておらず「提案されたから導入」を続けており、要件定義や比較検証が不足したまま、ツールが乱立している。
SaaS活用
「とりあえず動いている」ので良しとしてしまい、導入目的に沿ったSaaS利用ができているか評価していない。
比較軸
判断の物差しがないまま情シス業務を進めているので、業務改善ポイントも分からない。
【判定の目安(「情シス迷子)レベル):✓の数】
あなたが選択したのは0個です
0〜3個:クリア
全体は安定。気になる箇所をピンポイントで改善しましょう。
4〜6個:注意
早期の棚卸しと「最低限ルール」の定義で、迷子化を予防しましょう。
7〜9個:「情シス迷子」の兆候が強い
属人化と可視化不足が重なっている可能性大。短期の改善計画を。
10〜12個:要改善「情シス迷子」になっている可能性大
自力での全体設計と標準化は負荷が大きい段階。早めに改善を。
また、「情シス迷子」から脱却するために、外部支援も検討しましょう。
皆さんはいくつ当てはまりましたか?
ここで重要なことは、「情シス迷子」は担当者の努力不足ではなく構造問題から生まれるということです。
前の章で申し上げた通り、運用や組織の構造によって必要以上の不安が積み上がり、最終的にその不安から抜け出せず「情シス迷子」に陥ります。
まずは現状を見える化し、やる・やらないの線引き(最小限の基準)を決めることが、「情シス迷子」から抜け出す第一歩です。
上記のチェックリストによって、課題は見えてきたかと思います。
次にどの企業にも役立つ「運用の原則」を整理し、どこから・どう直すか考えていきましょう。
「情シス迷子」を生まない、情シス運用の原則とは?
「情シス迷子」から抜け出すには、他社比較ではなく自社の普遍的な原則を決め、小さな一歩でも確実に実施することが近道です。
情シス運用は、判断基準が明確であれば迷わず進められます。しかし基準が曖昧なままだと、属人化や場当たり的な対応が積み重なり、「情シス迷子」に陥りがちです。
まずは「最低限ここまで」という基準を決め、属人化を防ぎ、見える化と継続改善を回す――この順序で情シス運用を見直し、必要以上の不安に駆られない情シス体制を作りましょう。

①最低限
・管理者アカウント窃取対策のため、管理者アカウントだけでもMFAを装備。
・アカウント・権限・ライセンスなどの定期的な棚卸し。
※小規模環境の場合は「入退社時+月1回、5分の確認」などの“簡易棚卸し”でも可
・セキュリティパッチ更新・暗号化・画面ロック・マルウェア対策などの端末のセキュリティ対策を行う。OS標準装備のセキュリティ機能だけでも活用する。
・重要ログだけは90日程度を目安に検索できるように保存。要件がある業界はそれに合わせる。
・インシデント発生に備え、初動のRACI(Responsible(実行責任者)、Accountable(説明責任者)、Consulted(相談先)、Informed(報告先))を簡単にでも可視化。
「誰が」「誰に」「いつ」「どこに」連絡するかだけでも明示する。
②標準化(属人化の解消)
・入退社・権限付与・SaaS製品管理など、定型タスクはチェックリスト化。
・権限定義と変更管理の手順を明文化し、重要設定は可能であれば二者承認。
・システム一覧・責任範囲・システム間連携などの情報を集約。
③可視化(見えないものは最適化できない)
・SaaS・端末・アカウント・管理者権限の資産台帳を一元管理。
・月次ダッシュボード(表計算ツールなどでまとめるだけでも可)でKPIを共有
KPIの例:MFA適用率、入退社処理リードタイム、休眠ライセンス率など。
④継続改善(単発対応から仕組み化へ)
・継続的で定常的なイベントは運用カレンダーで管理
イベント例:月次の棚卸し、四半期のポリシー見直しなど。
・業務影響が予見される変更は個人ではなく、会議などで意思決定。
・障害・インシデント対応は事実ベースで振り返り、改善項目は手順に反映。
⑤ツール導入の原則(個別最適の増殖防止)
・要件定義→比較検討 → PoC(Proof of Concept:概念実証)→ 導入を徹底。目的が同じツールの二重契約は極力避ける(例外は明文化)
・導入時点でツール利用の終了条件を決め、データエクスポート方法も確認。
以上、「情シス迷子」を産まない情シス運用の原則を紹介いたしましたが、いかがでしょうか?
こうして文字で見るとやらなければいけないことが多いように見えるかと思いますが、大きなコストがかかるものや、時間をかけなければいけないものは少ないはずです。
重要なことは情シス担当者が不安になる構造を変えることと、原則の明示化です。
本コラムで挙げてきた不安の引き金は、おおよそ「評価軸がないこと」「業務のゴールが分からないこと」に集約されます。
原則は、これらを解消してくれる土台になります。
一方で、いきなり自分たちで作ろうとしても、どこまで定めれば良いのか迷う方も多いでしょう。
そこで、原則決めから皆さんの情シス環境を「あるべき姿」へ導く選択肢の1つを、次の章でご紹介したいと思います。
原則作りで迷ったときに効く、伴走支援という選択肢
皆さんにとって、前の章で触れた「原則決め」にどのような印象を持ちましたか?
恐らく「原則を決めるにも評価軸が欲しい」と思うのではないでしょうか?
実際、多くの情シス担当者が「何を軸に決めれば良いか」で迷い、原則作りが止まってしまいます。
そこで、評価軸を持つ外部の専門家を活用するのはいかがでしょうか?
例えば、クロス・ヘッドが提供している「情シスコンサルティング」では、皆さんの情シス環境の把握から情シスの改善、実運用までサポートし、情シスのあるべき姿へと導く支援を行っております。

「情シスコンサルティング」による業務改善は以下の5ステップで実施し、皆さんの情シスに関するお悩みを伴走して解決しております。
①現環境の整理
②不足ドキュメントの作成
③情シス改善・業務標準化(アウトソーシング)
④IT企画・DX・セキュリティ支援
⑤IT資産の活用・運用
上記の通り、コンサルティングだけではなく、運用までご支援しております。
アドバイスや提案、ドキュメント作成だけではなく、現場にも入り込み、お客様目線で「使える」仕組みを構築します。
前に触れた「原則決め」のようなご支援ももちろんお任せください。
多数の企業への情シス業務支援実績から、中立な第三者目線で評価、ご支援を行いながらも、お客様に合う設定や運用を整備しますので、一緒に情シス体制の「正解」を作り上げることができます。
また、運用に必要なドキュメント作成や整備もできますので、業務フローの明文化も実現可能です。
ドキュメント未整備の問題と、属人化の問題も同時に解消できるでしょう。
皆さんの足元の情シス環境を整えながら、業務の効率化を進め、会社の成長にもつながるIT戦略の推進までもご支援させていただきます。
もしご興味がございましたら、お気軽にご連絡ください。
まとめ:小さな棚卸しと「最低限ルール」から情シス運用を立て直す
情シスの不安は担当者の資質ではなく、構造的な要因が積み重なることで生まれます。
その結果として、属人化・場当たり的な運用・可視化不足などが進み、必要以上の不安から抜け出せない「情シス迷子」に陥ります。
解決の一歩は他社と比較して安心を得ようとすることではなく、自社の原則を簡単にでもいち早く決めることです。
大切なことは、小さく始めて早く回すこと。紙1枚にまとめることからでも結構です。
小さな原則も集まれば明瞭な基準になり、情シスをあるべき姿へ導くきっかけに変わるでしょう。
内製での原則決めに迷うのであれば、第三者のコンサルティングサービスやアドバイザーを活用することも有効です。
どんな企業の情シスも多かれ少なかれ不安を抱えながら日々業務を進めています。
このコラムがその不安と適切に付き合っていくきっかけになれば幸いです。
こちらのページでは業務改善に関するケーススタディをご紹介しています。
ぜひ、本コラムと併せてご覧ください。

『情シスSAMURAI』サービスページはこちらから















