DX実現に向けた活動を自社のリソースや知見だけで進められる企業はごく一部で、外部ベンダーに支援を求めることも多いはずです。しかしながら、決してDXを外部ベンダーに丸投げしてはいけません。
今回はDX実現に近づくために外部ベンダーとどのように付き合えばよいかみていきましょう。
目次
外部ベンダーへの丸投げは厳禁!
これまで他のコラムでも繰り返し触れたように、DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術を活用して自社のビジネスプロセスやサービス、ときには企業文化までを含めて「変革(Transformation)」し、変革によって成し遂げられる生産性向上や業務効率化とあわせ、事業競争力を強化することです。
ここでもう一度この文章を見返してみましょう。
すると気付くのは、あくまでも何らかの課題を抱えた現状があることを前提としていて、それらを変革するのがDXという点です。
言い換えると、DXは何かまったく新しいものをゼロから生み出すことではなく「現在の状況」を土台にして、そこから変革していくものだということです。
ですので、大前提として「現在の状況」を熟知している必要があります。
自社のサービスや製品、顧客、競合、強み・弱み、市場動向、自社内のリソース、企業文化、組織体系、人間関係など。DXに着手する前に把握しておくべき「現在の状況」は山ほどあります。
こうした「現在の状況」をまったく無視してDXを進めた場合、仮にDXプロジェクト自体は成功裏に終わり、これまでにない斬新な姿に変貌したとしても、採用したITシステムやビジネスプロセスが現場に受け入れられず、変革前よりも業務効率が低下するなど、期待した成果が得られないこともあり得ます。
DX推進には「現在の状況」に至った背景や、携わる社員の心情まで踏み込んだ深い理解も欠かせません。そして、その理解と経験を持ち合わせているのは既存の社員の皆さんを置いてほかにありません。
DX推進は手間と時間がかかり、さまざまな調整ごとも多く、時には疲弊してしまうこともあるでしょう。
しかしながら、疲弊してまで進めるDXを期待した成果に結びつけるためにも、「現在の状況」を知る社員の皆さんがDX推進をリードする必要があるのではないでしょうか。
このような理由から決してDX推進を外部ベンダーに丸投げしてはいけないのです。
外部ベンダーとゴールを共有
DXに限ったことではありませんが、支援をする側、される側の双方が、目指すゴールについて同じ理解を持つことが大切です。
ともすると、外部ベンダー側は自社の製品やサービスを売り込みたい思いが先行し、一方でDXを担当する社員側としても、何とかDX推進プロジェクトを早く終わらせるために、現場を置き去りにしてプロジェクトを進めるような状況におちいりかねません。
外部ベンダーと自社が目指すゴールを共有するには、時間をかけたコミュニケーションが必要になるでしょう。
またDXは一度プロジェクトが終われば完了ではなく、その後も継続的に変化を繰り返しながら事業競争力を維持していくのが一般的です。そのためDX推進を共にする外部ベンダーとは長い付き合いとなることも想定されます。
長い時間をかけてコミュニケーションを図って外部ベンダーにも自社ビジネスや企業文化の理解を深めてもらい、その上で過剰でも不足でもない最適な形での支援を受けられる関係性を築くことも大切なポイントでしょう。
このように「自社にとって最適なDXとはどのような姿か」「DXによって何を実現し何を成果とするのか」など、決して足元の目標ではなく、DX実現後に目指す最終的なゴールについて、外部ベンダーとの関係構築を図りながら共有することがDX成功のカギの1つといえるでしょう。
外部ベンダーとの役割分担
外部ベンダーに丸投げせずに社員が主体となるDX推進プロジェクトが立ち上がり、良い外部ベンダーも見つかりゴール共有まで出来ると、次は自社と外部ベンダーとの役割分担をどうすべきか考えることになるでしょう。
たとえば当社ではDXを進める場合、スモールスタートで、確実に、効果を確かめながら現場の成功体験を積み重ね、DXのファン(支援者や賛同者)を増やすことをおすすめしており、そのためのITシステムとしてkintoneを活用しています。
kintoneを活用したDXについては下記の別コラムをご覧いただきたいのですが、ここでお伝えしたいのは、業務効率化に向けたITシステム(当社の場合はkintone)構築は内製化すべきという点です。
前のセクションで示したとおり、DXは自社の「現在の状況」を深く理解する社員の皆さんが推進すべきで、外部ベンダーはそのための最適な手段を提案し、ITシステム活用の支援をするという役割分担が理想的といえるでしょう。
また、内製でITシステムが構築できるようになると、利用開始後も継続的な改善や改良を自らおこなえるようになります。
たとえばkintoneはローコード・ノーコード開発ツールと言われるプログラミングを必要とせずに業務アプリケーションの作成・実行ができるクラウドサービスです。
プログラミングなしで簡単にアプリケーションを作成・実行できるので、現場で何か不都合や、良いアイデアが浮かんだときに、外部ベンダーに頼らずとも自らの手で速やかにITシステムに手を加え、実現することができます。
こうなると、ITシステムを活用した事業面のDXだけでなく、DXに用いるITシステム自体も変革され、ビジネススピードや柔軟性が向上し、加速度的に自社の事業競争力が増していくことも期待できることでしょう。
まとめ
外部ベンダーからはデジタル技術の活用について支援や提案を受け、一方で本質的なDXに向けた業務分析やデジタル技術の実装については内製で行う。そんな外部ベンダーとの付き合い方をご紹介してきました。
外部ベンダーと良くコミュニケーションをとり、自社への理解を深めてもらい、自社では気付かない課題の指摘や提案を得ながら伴走型でDXを進めていく。
そんな外部ベンダーとの縁に恵まれれば、皆さんのDXも成功に近づくことでしょう。