情シス人材の不足が叫ばれて長い月日が経ちましたが、依然として人材は充足せず、企業間で人材を「奪い合う」状況が続いています。
経済産業省による2030年の推計では、「IT企業及びユーザ企業情シス部門に所属する人材」が最大79万人不足すると記されています。
参照:経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課~IT分野について~
皆さんも情シス人材の退職や採用・確保に苦労した経験はあるのではないでしょうか?
情シス人材の退職は企業全体に大きな影響を与える可能性を含んでおり、退職する情シス担当者の業務をいかに企業全体への業務影響なく円滑に引き継ぐかは、丁寧に考えるべき課題かもしれません。
本コラムでは、情シス担当者の退職が引き起こす業務上のリスクとその背景を説明し、実際の支援事例を交えながら、企業全体への業務影響を最小限にとどめ、情シス体制を守るための現実的な解決策をご紹介していきます。
このコラムに関心を持たれた皆さんは、自社の情シス体制に不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
「人が減ってから」ではなく、「減るかもしれない今」から備えることが大事です。
情シス人材の退職と引き継ぎについて、今からできることを考えていきましょう。
目次
情シス担当者の退職がもたらす静かな危機
企業のIT基盤を支える情報システム部門(情シス)は、日々のPCキッティングやヘルプデスク対応、アカウント管理、セキュリティ対策など、幅広い業務を担っています。
こうした業務は、通常は複数名で分担しながら進められることが多いですが、ある日突然、担当者の退職によってそのバランスが崩れることがあります。
これは情シス担当者が1名のいわゆる”ひとり情シス”企業だけの問題ではなく、十分な体制を持つ大企業も決して例外ではありません。
大企業に見られる大人数の情シス部門でも業務や役割が担当者別に縦割りとなっていることが多く、業務の属人化により実質的にひとり情シスと変わらない状況にあることも多いのではないでしょうか。
一人抜けただけで情シス業務全体が回らなくなる事態は、どの企業にも当てはまるリスクと言えます。

たとえ退職者の後任がすぐに見つかった場合でも、退職者が担っていた業務の引き継ぎが不十分な場合、ノウハウの喪失や業務の非効率化が一気に表面化します。
また、退職者の業務引き継ぎがスムーズに運んだとしても、情シス業務に慣れない後任が日常的なノンコア業務に追われるあまり、セキュリティ強化やシステム改善といった中長期的なコア業務に手が回らなくなり、結果として企業全体のIT戦略にも影響を及ぼす可能性もあります。
「なんとか回っているように見える」状態の裏で、実は業務の質が低下し、間接的に企業全体の業務に影響を及ぼしているケースは、多くの企業で珍しい事態ではありません。
ノンコア業務に追われる情シスが抱える3つの問題
情シス部門が日々対応している業務の多くは、PCキッティングやアカウント管理、ヘルプデスク対応などの“ノンコア業務”です。
これらは企業の円滑な運営に欠かせない定常業務である一方、IT戦略やセキュリティ強化といった“コア業務”とは性質が異なり、時間と手間がかかる割に企業の業績には直結しづらいという特徴があります。
情シス担当者が退職し、残された人員またはひとり情シス状態でこれらのノンコア業務をすべて担うことになると、以下のような問題が顕在化します。
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- コア業務の停滞
ノンコア業務に時間を取られることで、セキュリティ対策やシステム改善、DX推進などの戦略的業務が後回しになりがちです。結果として、企業のIT基盤の強化が進まず、本業の事業競争力の低下につながる恐れがあります。
- コア業務の停滞
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- 業務品質の低下
限られた人員で多くの業務をこなすことになり、対応漏れやミスが発生しやすくなります。ミスが続くと社内からの信頼が揺らぎ、情シス部門の評価にも影響を及ぼす可能性があります。
- 業務品質の低下
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- 担当者の負担増加と離職リスク
業務量の増加により、精神的・身体的な負荷が高まり、残された担当者が疲弊し、休職や離職に至ってしまうケースもあります。
- 担当者の負担増加と離職リスク
こうした問題は、情シス部門だけでなく企業全体のIT運用に影響を及ぼすため、早期の対策が求められます。
引き継ぎがうまくいかない4つの背景と、残された担当者の苦悩
情シス担当者の退職は、単なる人員の減少では済みません。
特に引き継ぎが不十分な場合、業務の継続性が大きく揺らぎます。情シス業務は属人化しやすく、担当者の頭の中だけで完結しているケースも少なくありません。
引き継ぎがうまくいかない背景には、以下のような要因があります:
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- ドキュメントが整備されていない
業務手順や設定情報が口頭や個人メモに留まり、他の担当者が把握できていない。
- ドキュメントが整備されていない
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- 引き継ぎ期間が短い/余裕がない
退職のタイミングが急で、十分な時間を確保できない。
- 引き継ぎ期間が短い/余裕がない
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- 業務の範囲が広く、全体像が見えづらい
定常業務からシステム運用まで多岐にわたり、何を誰が担当していたかが不明瞭。
- 業務の範囲が広く、全体像が見えづらい
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- 前任者と後任者の業務理解や経験のギャップ
前任者が長年の経験で感覚的にこなしていた業務も、後任者には見えづらく、引き継ぎが難航することがある。
- 前任者と後任者の業務理解や経験のギャップ
こうした中で属人化が進み、さらに情シス担当者がひとり情シス状態の場合、業務の重さが一気にのしかかります。

定常業務に追われる中で、突発的なシステム障害やセキュリティインシデントが発生すれば、対応はすべて一人で担うことになります。情シス担当者にかかるプレッシャーは大きく、精神的な負担も増すばかりでしょう。
さらに、社内からは「情シスの対応が遅い」「品質が下がった」といった声が上がり、担当者のモチベーション低下や孤立感を招くこともあります。
こうした状況が続けば、残された担当者も退職を考え始める可能性があり、情シス部門の崩壊につながりかねません。
ひとり情シスは、企業のIT運用にとって大きなリスクです。引き継ぎの不備がその引き金となることを理解し、早めに対策を講じることが重要です。
ノンコア業務のアウトソーシングで、情シスの本来の役割を取り戻す
情シス担当者の退職や人員不足によって定常業務が重くのしかかる状態となっている場合、アウトソーシング(業務委託)の活用が有効な選択肢となります。
特に、PCキッティングやヘルプデスク対応などのノンコア業務は、外部に任せることで情シス部門が本来担うべきコア業務に集中できる環境を整えることが可能です。
アウトソーシングによって得られる主なメリットは以下の通りです:
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- 業務負荷の軽減
ノンコア業務を外部に任せることで、社内担当者の負担が大幅に減少します。
- 業務負荷の軽減
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- コア業務への集中
セキュリティ強化、システム改善、IT戦略立案など、企業の成長に直結するコア業務に時間を割けるようになります。
- コア業務への集中
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- 業務の標準化・可視化
アウトソーシングでは多くの場合、現状把握から着手することになります。これにより属人化・ブラックボックス化していた業務が整理され、業務の可視化やドキュメント化も進みます。
- 業務の標準化・可視化
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- 突発的な対応力の向上
アウトソーシング先との組み方次第で、障害対応や繁忙期のキッティングなど、急な業務にも柔軟に対応できる体制が整います。
- 突発的な対応力の向上
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- 人材リスクの分散
社内に依存しない運用体制を構築することで、退職や異動による影響を最小限に抑えられます。
- 人材リスクの分散
情シス部門が業務負荷に苦しんでいるとき、あるいはひとり情シスとしてプレッシャーを感じているときには、業務代行(アウトソーシング)という選択肢があることを思い出していただければと思います。

外部の力を借りることによって情シスの役割を守り、企業のIT運用を安定させ、さらには企業の事業競争力を高める一助となるでしょう。
事例紹介:アウトソーシングで課題を解決!
このセクションでは実際に情シス業務をアウトソーシングした企業の事例をご紹介します。
背景はさまざまですが、皆さんの参考になれば幸いです。
ケース:1
DXサービス企業 従業員数約300名
背景:情シス担当者2名のうち1名が退職し、ひとり情シス状態に。
この企業では情シス担当者の退職でひとり情シス状態となり、定常業務(ノンコア業務)の負荷が増えてしまいました。
そのため、「情シスSAMURAI」へのアウトソーシングを決意しました。
「情シスSAMURAI」にお任せいただいた定常業務は以下です。
・アカウント管理
→月に25名分ほどの各種SaaSサービスのアカウント改廃
・PCキッティング
→月に20台分ほどのWindows/MacのPCキッティング
・ドキュメント整備
→手順書やPC管理台帳などの整備
・一部ヘルプデスクの代行
残された情シス担当者はひとり情シスとなってしまい、コア業務に注力できない状態となっていましたが、定常業務を手放すことで業務負荷が軽減し、コア業務に時間を使えるようになりました。
今後は新規システム導入時の検証や導入作業も「情シスSAMURAI」に任せ、共に情シス業務の改善推進を進めていく予定です。
ケース:2
技術開発、技術支援、技術コンサルティング企業 従業員数約80名
背景:複数人いる情シス担当者の休業が重なり、情シス担当者が実質不在に。
この企業では一時的に情シス担当者が不在となる時期が発生することが判明し、体制確保のために「情シスSAMURAI」へのアウトソーシングを決意しました。
「情シスSAMURAI」にお任せいただいた情シス業務は以下です。
・ヘルプデスク
・キッティング
→社用PC、スマートフォンのキッティング
・アカウント管理
→Microsoft 365や各種SaaSサービスなどのアカウント改廃
・ITインフラ全般の運用
・運用改善、IT企画推進
→ISMS対応やメール誤送信対策の見直しなど
現状では社員の情シス担当者は不在の中で「情シスSAMURAI」が情シス業務を運用しています。
今後担当者が復帰した際に、滞りなく不在中の内容を引き継げるよう、情報の取りまとめや資料作成なども同時に行いながら、情シス業務の安定運用を実現しています。
ケース:3
国際NGOの日本法人 職員数約60名
背景:情シス担当者の離任を機に情シス体制の強化を検討。
情シス担当者の離任が決まり、情シス体制の脆弱性が危惧されました。そこで、担当者の離任のたびに情シス体制が揺らがないようにするために「情シスSAMURAI」へのアウトソーシングを決意しました。
「情シスSAMURAI」にお任せいただいた情シス業務は以下です。
・ヘルプデスク
→問い合わせ窓口を「情シスSAMURAI」に一本化。月に25件ほど対応。
・キッティング・アカウント作成
→月3件ほど対応
・年に1回の停電対応
・管理部門担当者からのよろず相談対応
→月に6件ほど対応。情シス課題や問題調査も実施。
・本社からの依頼・調査対応
発生頻度が低い法定停電対応などは属人化していましたが、それらも「情シスSAMURAI」が手順を確立することで、属人化を解消することができました。
業務を属人化させず、情シス課題に素早く対応できる情シス体制への移行を目指し、現在も伴走支援を続けています。
上記はご支援例のほんの一部ですが、3ケースをご紹介いたしました。
三者三様の理由でアウトソーシングを決断された状況が見えてくるかと思います。
ひとり情シス状態の解消や、情シス担当者の欠員を補う手段としては、他の従業員に兼務や異動を打診したり、新たに採用するといった対応策もあるでしょう。
また、企業の状況によってはアウトソーシングを選択するより、内製で対応した方が良いケースもあるでしょう。

外部に支援を依頼することに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、皆さんの困りごとにマッチするアウトソーシングサービスはきっとあるはずです。
もしものために、アウトソーシングという選択肢を頭の片隅に置いていただけると幸いです。
まとめ:情シスの未来を守るために、今できること
ひとり情シス状態の常態化や情シス担当者の退職や人材不足は、企業のIT運用にとって大きな転機となります。
特に、属人化していた業務の引き継ぎ不備、ノンコア業務の負荷増大によって、残された担当者の業務の質やスピードが低下してしまうケースは少なくありません。
こうした状況は、担当者個人の努力だけでは解決が難しく、組織としての対応が求められます。
特に、ノンコア業務に追われてコア業務に手が回らない状態が続けば、企業のIT戦略そのものが停滞してしまう可能性もあります。
だからこそ、情シス部門が苦しい状況にあるとき、あるいはひとり情シスとしてプレッシャーを感じているときに、アウトソーシングという選択肢があることを思い出していただきたいです。外部の力を借りることで、業務の安定化や負荷軽減が実現し、情シス本来の役割を果たせる体制を整えることができるでしょう。
情シスの未来を守るために今できることは、「人が減ってから」ではなく、「減るかもしれない今」から備えることです。
業務の棚卸しや体制の見直しを通じて、情シスが安心して働ける環境づくりを始めてみませんか?
こちらのページではひとり情シスに関するケーススタディをご紹介しています。
ぜひ、本コラムと併せてご覧ください。

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