標的型攻撃メールとは?見分け方・対策・開いたときの対処法を解説

サイバー攻撃の手口が高度化するなかで、企業への侵入の脆弱性として狙われ続けているのがメールです。なかでも巧妙かつ被害が発生しやすいのが、特定の企業や担当者を狙い撃ちにする標的型攻撃メールです。

攻撃者は取引先や公的機関になりすまし、業務連絡を装って添付ファイルを開かせたり、リンクをクリックさせたりします。標的の業務や取引関係に合わせて内容が作り込まれるため、不特定多数へ一斉に送られる迷惑メールのような不自然さが少なく、開封前に見抜くことは難しくなります。実際の被害でも、「取引先からの連絡だと思って添付ファイルを開いてしまった」「気付いた時には社内の複数端末に感染が広がっていた」というケースは少なくありません。

本記事では、標的型攻撃メールの手口や見分け方、国内の被害事例、防止策から、不審なメールのURLや添付ファイルを操作してしまった場合の対処法までをまとめました。社内のセキュリティ強化や研修資料の参考にしてください。

情シス業務のアウトソーシングでお悩み解決 情シスSAMURAI

標的型攻撃メールとは

標的型攻撃メールとは、特定の組織や個人を狙って送信され、機密情報の窃取や組織への侵入を目的とするサイバー攻撃です。攻撃者は標的の業務内容や取引関係を事前に調べ、疑いを持たれにくいメールを作り込みます。

ここでは、標的型攻撃メールの目的や特徴、他のサイバー攻撃との違いを解説します。

▼特定の組織や個人を標的にしたサイバー攻撃
▼情報窃取や組織への侵入を目的とし、被害が拡大しやすい
▼フィッシングメール・ビジネスメール詐欺・ランサムウェアとの違い

特定の組織や個人を標的にしたサイバー攻撃

標的型攻撃メールとは、攻撃者があらかじめ狙いを定めた特定の組織や個人へ送りつけるメールです。機密情報の窃取や認証情報の詐取、不正アクセス、マルウェア感染などを目的に、実在する取引先の担当者や社内の関係者、公的機関になりすまし、業務に関係のある内容に見せかけて添付ファイルの開封やリンクのクリックを誘導します。

調べ上げた情報が反映されているため、受信者から見ると普段の業務メールとの違いが分かりにくくなります。「日本語が不自然」「差出人に心当たりがない」といった従来の見分け方が通用しにくい点に注意が必要です。

なお、IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威」組織編(2026年版)でも、「機密情報を狙った標的型攻撃」は5位に選出されています。2016年以降連続してランクインしており恒常的な脅威といえるでしょう。ここでいう「標的型攻撃」は、標的型攻撃メールに限らず、不正アクセスやWebサイト改ざんなども含めた攻撃全般を指します。

参考として、同ランキングの1〜5位は以下のとおりです。

順位 組織向け脅威 初選出年 10大脅威での取り扱い(2016年以降)
1 ランサム攻撃による被害 2016年 11年連続11回目
2 サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 2019年 8年連続8回目
3 AIの利用をめぐるサイバーリスク 2026年 初選出
4 システムの脆弱性を悪用した攻撃 2016年 6年連続9回目
5 機密情報を狙った標的型攻撃 2016年 11年連続11回目

※情報セキュリティ10大脅威 2026:https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html

情報窃取や組織への侵入を目的とし、被害が拡大しやすい

攻撃者にとって、メールは組織へ入り込むための入口にすぎません。標的型攻撃では、侵入後に社内の情報収集や管理者権限の奪取(権限昇格)、他の端末・サーバーへの横展開が行われる場合があり、最初に感染した1台にとどまらず、組織全体へ被害が広がるおそれがあります。その意味では、先の10大脅威にランクインしている「ランサムウェア攻撃」、「システムの脆弱性を悪用した攻撃」、「サプライチェーンへの攻撃」も、標的型攻撃メールが皮切りになるケースがあり、メールは最も狙われやすいポイントとも言えます。

他にも、窃取された情報や乗っ取られたアカウントが新たな攻撃に悪用され、取引先を狙う攻撃の踏み台にされることもあります。自社が加害者の立場に立たされるリスクにも注意が必要です。

標的型攻撃では、侵入後に社内の情報収集や管理者権限の奪取(権限昇格)、他の端末・サーバーへの横展開が進められる場合があります

フィッシングメール・ビジネスメール詐欺・ランサムウェアとの違い

標的型攻撃メールと他の攻撃との違いは、「目的」と「被害の広がり方」を比べると整理しやすくなります。代表的な4つの攻撃手法について、主な目的と被害の例を整理すると次のとおりです。

攻撃手法 目的 被害の広がり方
標的型攻撃メール 機密情報・認証情報の窃取、組織への侵入、マルウェア感染 侵入後の権限昇格・横展開や、窃取情報・乗っ取りアカウントの悪用により被害が連鎖的に拡大しやすい
フィッシングメール 個人情報・認証情報の詐取 詐取した情報で不正ログイン、不正送金、情報漏えいなどに悪用される
ビジネスメール詐欺(BEC) 金銭の詐取 不正送金が主な被害だが、メールアカウントの乗っ取りや取引先へのなりすましにより、被害が継続・拡大する場合もある
ランサムウェア データの暗号化・窃取と身代金の要求 業務停止に加え、窃取データの公開を迫る二重恐喝や取引先への影響に発展する場合がある

ただし、実際の攻撃はこの4つにきれいに分かれるわけではありません。標的型攻撃メールのリンクから認証情報を盗むケースや、メールを起点に侵入したうえでランサムウェアを展開するケースなど、複数の手法が組み合わされることも少なくありません。

標的型攻撃メールの代表的な手口

標的型攻撃メールの手口は、大きく「添付ファイル型」「リンク型」「ソーシャルエンジニアリング型」の3つに分けられます。いずれも業務で日常的に行われるやり取りを装い、受信者が警戒しにくい形で仕掛けられます。

それぞれの手口を順番に見ていきましょう。

▼添付ファイル型:文書ファイルにマルウェアを仕込む
▼リンク型:偽サイトへ誘導し情報を盗む
▼ソーシャルエンジニアリング型:技術的な脆弱性だけでなく、人の心理的な隙も利用する

添付ファイル型:文書ファイルにマルウェアを仕込む

添付ファイル型は、業務でよく使われる形式のファイルや圧縮ファイルを悪用し、開封・実行させることでマルウェアに感染させる手口です。WordやExcel、PDF、zipなど、受信者が日常的に扱う形式が悪用されます。

内容は請求書や見積書、履歴書、社内通知などの業務書類を装うケースが多く、開かなければ業務が進まない文書に見せかける点が巧妙です。

標的型攻撃メールの手口は、大きく「添付ファイル型」「リンク型」「ソーシャルエンジニアリング型」の3つに分けられます

リンク型は、メール本文中のURLから偽サイトへ誘導し、入力された認証情報や機密情報を盗み取る手口です。誘導先は正規のサイトに酷似しており、ログイン画面だと思い込んでIDとパスワードを入力すると、その情報がそのまま攻撃者の手に渡ります。

実在するクラウドサービスや社内システムのログイン画面が模倣されるケースも増えています。例えば、社内で使っているグループウェアやクラウドストレージの画面をそのまま再現し、「セッションの有効期限が切れました。再度ログインしてください」といった文言でIDとパスワードの入力を促します。画面の見た目だけで判別することは難しいため、URL(リンク先)まで確認する必要があります。

ソーシャルエンジニアリング型:技術的な脆弱性だけでなく、人の心理的な隙も利用する

ソーシャルエンジニアリング型は、システムの脆弱性だけに頼らず、人の心理的な隙や行動のミスを突いて情報を引き出したり、不正な操作をさせたりする手口です。攻撃者は、標的と関係のありそうな人物や組織になりすまし、時間をかけて信頼を得たうえでだまそうとします。

代表例が「やり取り型」です。例えば、「御社の製品について見積もりを依頼したい」といった無害な問い合わせから始め、数回のやり取りを重ねたところで「仕様書を添付しました」と不正なファイルを送りつけます。すでに会話が成立している状態で攻撃するため、受信者が不審だと判断しにくくなります。不審な点があれば相手に電話など別の手段で確認するなどの対策が必要です。

このほか、窃取した過去のメールのやり取りに割り込んで返信を装う手口や、人事異動や採用応募など時期に合わせた用件を装う手口も確認されています。

標的型攻撃メールを見抜く4つのポイント

標的型攻撃メールを見抜くには、送信元・件名や本文・添付ファイル・URLの4点を確認することが有効です。攻撃者は複数の要素を組み合わせて偽装するため、1つの項目だけで判断せず、複数の項目を突き合わせる必要があります。

以下で、それぞれのチェックポイントを順番に解説します。

▼送信元:フリーメールやなりすましドメインに注意する
▼件名・本文:不自然な言い回しや緊急性の強調に注意する
▼添付ファイル:拡張子の偽装に注意する
▼URL:表示とリンク先の相違に注意する

送信元:フリーメールやなりすましドメインに注意する

本来は企業ドメインから届くはずのメールが、Gmailなどのフリーメールから送信されている場合は注意が必要です。ただし正規の連絡で使われることもあるため、送信元だけで断定せず、電話など別の手段で本人へ確認しましょう。

また、正規のドメインに似せた「なりすましドメイン」も使われます。例えば正規のドメインが「example.co.jp」の場合、「exarnple.co.jp」(mをrnに置き換え)、「examp1e.co.jp」(lを数字の1に置き換え)、「example-co.jp」(ドットをハイフンに変更)のように偽装されます。署名に記載された会社名や担当者名と、送信元アドレスのドメインが一致しているかまで確認することが重要です。

件名・本文:不自然な言い回しや緊急性の強調に注意する

「至急」「重要」など緊急性を強調する件名や、身に覚えのない件名のメールには警戒が必要です。例えば「【至急】請求書の差し替えについて」「アカウント停止のお知らせ」のように、対応が遅れると不利益が生じると思わせる件名が使われます。受信者に考える時間を与えないための手口であるため、急かされていると感じたときこそ、いったん手を止めてください。

不自然な日本語や直訳的な言い回しも疑うべきサインです。「対応」が「对应」、「広告」が「廣告」のように、日本語ではあまり使われない簡体字や繁体字が混ざっているケースもあります。ただし近年は生成AIなどの活用により自然な文面の不審メールも増えています。文面の違和感はあくまで手がかりの一つとして扱う必要があるでしょう。

添付ファイル:拡張子の偽装に注意する

添付ファイルは、ファイル名だけでなく拡張子まで確認することが重要です。特に注意したいのは次の形式です。

  • .exe:プログラムを直接実行するファイル
  • .lnk:ショートカットファイル。開くと別のプログラムが実行される
  • .iso:ディスクイメージファイル。内部に実行ファイルやスクリプトが含まれ、それらを実行すると感染するおそれがある

また、文書ファイルに見せかけた二重拡張子にも警戒しましょう。「請求書.pdf.exe」のように末尾へ実行ファイルの拡張子を付けたものや、「請求書.pdf     .exe」のように空白を挟んで本来の拡張子を隠すものがあります。Windowsでは、設定によって拡張子が表示されない場合があるため、アイコンやファイル名の見た目だけで安全と判断するのは危険です。拡張子を常に表示する設定に変更しておくとよいでしょう。圧縮ファイルに実行ファイルが仕込まれるケースもあるため、心当たりのない添付ファイルは安易に解凍しないでください。

URL:表示とリンク先の相違に注意する

メール上に表示されているURLと、実際のリンク先が異なる場合があります。

例えば本文には「https://example.co.jp/login」と表示されていても、実際のリンク先は「https://example-co-login.net/」という別のドメインになっているケースなどがあります。HTMLメールでは表示テキストとリンク先を別々に設定できるため、こうした偽装が可能になります。

PCではリンクをクリックせずマウスポインターを合わせ、表示される実際のリンク先を確認しましょう。確認しにくいスマートフォンなどでは、むやみにアクセスせず、公式サイトをブックマークから開くか、正規のURLを自分で入力してください。検索を利用する場合も、アクセス前に公式ドメインを確認し、不明点があれば電話など別の手段で送信元へ確認する方法が安全です。

標的型攻撃メールを見抜くには、送信元・件名や本文・添付ファイル・URLの4点を確認することが有効です

【国内】標的型攻撃メールの被害事例

国内でも、標的型攻撃メールを起点とした大規模な情報漏えいが発生しています。ここでは代表的な3つの事例を紹介します。

▼大手旅行代理店で約679万人分の個人情報が流出した可能性がある事例
▼公的機関で100万件超の個人情報が流出した事例
▼乗っ取られたアカウントが悪用され攻撃メールが送信された事例

大手旅行代理店で約679万人分の個人情報が流出した可能性がある事例

大手旅行代理店では、取引先を装ったメールをきっかけに、約679万人分(発表当初は約793万人)の個人情報が流出した可能性があると公表されました。取引先の航空会社になりすましたメールをオペレーターが業務上のメールと判断し、添付ファイルを開封した結果、端末がマルウェアに感染したとされています。

感染は複数の端末・サーバーへ広がり、流出した可能性がある情報には氏名や住所、パスポート情報などが含まれていました。正規の取引先に見えるメールであったため、受信者が疑いを持ちにくかった点が要因といえます。

公的機関で100万件超の個人情報が流出した事例

ある公的機関では、職員が標的型攻撃メール内のリンクをクリックしたことで、端末がマルウェアに感染しました。その後攻撃者から複数の職員宛に不審なメールが送られ、添付ファイルを開いてしまった端末や感染端末からの横展開での感染が広がった結果、最終的に31台のPCが感染。氏名や基礎年金番号を含む100万件を超える個人情報が流出しました。

初回の不審通信を検知した後も、組織内で情報共有や対応が徹底されず、被害の把握と有効な対策が遅れた点はこの事例の教訓です。初動対応を終えた後も、通信ログや端末の挙動を継続的に監視する体制が求められます。

乗っ取られたアカウントが悪用され攻撃メールが送信された事例

ある国内メーカーでは、社員のメールアカウントが乗っ取られ、顧客のメールアドレス宛に994通の標的型攻撃メールが送信されました。きっかけは、取引先を装ったメールのURLへ社員がアクセスし、ID・パスワードを入力してしまったことでした。

このように正規のアカウントが乗っ取られると、攻撃メールは実在する社員のメールアドレスから送信されることになります。受け取った側には実在する担当者からのメールとして届くため、被害が連鎖するおそれがあります。

同社の報告では、ログの調査によってメール全文がダウンロードされた形跡が確認され、メールに含まれていた一部の個人情報や製品の価格情報・契約内容などの漏えいも確認されました。アカウントの乗っ取りは自社の情報漏えいにとどまらず、取引先や顧客への二次被害を招く点を社内で共有しておく必要があります。

標的型攻撃メールの被害を防ぐためにできること

標的型攻撃メールへの対策は、社員一人ひとりの行動と組織としての仕組みづくりを組み合わせることが基本です。どちらか一方だけでは、巧妙化する攻撃を防ぎきれない場合があります。

ここでは、個人と組織それぞれの対策を整理します。

個人(社員)でできる対策

社員一人ひとりができる基本的な対策は、脆弱性を放置しないことと、不審なメールを自己判断で処理しないことです。OSやアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃が多く確認されているため、修正プログラム(セキュリティパッチ)が公開されたら速やかに適用し、自動更新で適用漏れを防ぐことが重要です。

また、不審なメールは開かずに対応することが原則です。少しでも違和感があれば、自己判断せず情報システム部門に確認する習慣をつけましょう。

組織として整備すべき対策

組織としては、技術的な防御・訓練・報告体制の3つを整備することが求められます。技術面の主な対策は次のとおりです。

  • ウイルス対策ソフト・EDR/XDRの導入:端末などの不審な挙動を検知・調査し、感染後の被害拡大を抑える
  • 送信ドメイン認証(SPF・DKIM・DMARC)の設定:自社ドメインを装う、なりすましメールを受信側が判定し、受信側で隔離・拒否しやすくする
  • メールフィルタリング:不審な添付ファイルやURLを含むメールを事前に遮断する

ただし、これらの仕組みだけで標的型攻撃メールを100%防げるわけではありません。ネットワークの監視やログ管理とあわせ、複数の対策を組み合わせて防御を多層化する考え方が重要です。

人的な対策としては、標的型攻撃メール訓練の定期的な実施が効果的でしょう。模擬の攻撃メールを送信し開封率やクリック率を集計すれば、現状のセキュリティ意識を可視化できます。訓練は実施して終わりではなく、結果を分析して再訓練や研修計画へつなげる運用が欠かせません。

あわせて、不審なメールを受信した際にすぐ情報システム部門へ報告できる体制も必要です。1人に届いた不審メールは、他の社員にも同時に送られている可能性があります。「誰に」「どのように」報告するかを明文化し、早期に全社へ周知できる状態にしておきましょう。

標的型攻撃メールのURLや添付ファイルを操作してしまったら?取るべき行動

不審なメールを表示しただけか、リンクをクリックしたか、認証情報を入力したか、添付ファイルを開いたかによって、初動対応は異なります。万が一、添付ファイルを開いてしまった場合は、端末をネットワークから切断し、情報システム部門へ報告することが被害の拡大を防ぎます。慌ててPCの電源を切るなど、下手に動くと原因調査に必要な情報を失うおそれもあるため、あらかじめ決めた手順に沿って対応しましょう。

操作してしまった内容別に、取るべき行動は次のとおりです。

▼メール本文を表示・プレビューしただけの場合
▼メール内のURLをクリックした場合
▼添付ファイルを開いた・実行した場合
▼認証情報を入力した場合
▼共通:速やかに報告し、再発防止につなげる

ここからは、ケースごとに取るべき行動を詳しく解説します。

メール本文を表示・プレビューしただけの場合

本文を表示・プレビューしただけの段階では、それ以上の操作をせず、情報システム部門へ報告することが基本です。具体的な対応手順は以下のとおりです。

  1. その場で操作の手を止める
  2. URLのクリックや添付ファイルの開封はせず、画面を閉じる
  3. 受信日時・送信元・件名を控える
  4. 情報システム部門へ報告する
  5. 以降の対応は、情報システム部門の指示に従う

受信したメールやヘッダー情報は原因調査の手がかりになるため、調査が終わるまで自己判断で削除しないでください。なお、表示しただけの場合は、必ずしもネットワークの切断まで行う必要はありません。ただし、社内ルールで切断が定められている場合は、そのルールを優先しましょう。

メール内のURLをクリックした場合

メール内のURLをクリックした場合は、まずリスクの高い状況に当てはまっていないかを確認するところから始めます。次のいずれかに当てはまる場合は、後述の「添付ファイルを開いた・実行した場合」と同じ高リスクの手順に切り替えてください。

  • ファイルが自動的にダウンロードされた
  • ダウンロードしたファイルを実行した
  • セキュリティ警告や不審なポップアップが表示された
  • 端末の動作が急に遅くなるなど、挙動に変化があった
  • ID・パスワードなどの認証情報を入力した

いずれにも当てはまらない場合は、次の順番で対応します。

  1. 開いたページを閉じ、ページ上で追加の操作をしない
  2. クリックしたURL、クリックした時刻、表示された画面を記録する
  3. 情報システム部門へ報告する
  4. 指示があるまで、同じURLへ再度アクセスしない

表示された画面は、撮影して残しておくと調査がスムーズに進みます。

添付ファイルを開いた・実行した場合

添付ファイルを開いた、または実行してしまった場合は、マルウェアに感染した可能性があるため、感染の拡大を止める対応と、調査に必要な情報を残す対応を同時に行います。対応手順は以下のとおりです。

  1. 社内手順に従って端末をネットワークから切断する(LANケーブルを抜く、Wi-FiやVPNをオフにする)
  2. 端末は電源を入れたまま、そのままの状態を保つ
  3. 情報システム部門へ速やかに報告する
  4. 開いたファイル名、開いた時刻、実行した操作を正確に伝える
  5. ウイルススキャンや復旧作業は、情報システム部門の指示を受けてから実施する

PCの電源を切る、再起動する、初期化するといった操作を自己判断で行うと、原因調査に必要なログや痕跡が失われるおそれがあります。受信したメールや添付ファイルも証拠となる場合があるため、勝手に削除しないようにしましょう。特に、WordやExcelで「マクロを有効にする」「コンテンツの有効化」などをクリックした場合は、マルウェアが動作した可能性が高いため、その事実も必ず伝えましょう。

認証情報を入力した場合

認証情報の入力は、URLのクリックや添付ファイルの開封と重複して発生する可能性がある状態です。該当するケースの手順を行ったうえで、次のアカウント保護の手順を追加してください。

  1. メールから開いたページを閉じ、そのページには再度ログインしない
  2. 入力した情報を洗い出して報告する(ID、パスワード、ワンタイムコード、MFAの承認操作、その他の個人情報・機密情報)
  3. 情報システム部門の指示に従い、感染が疑われる端末とは別の安全な端末からパスワードを変更する
  4. 既存セッションの無効化と、全端末からのログアウトを情報システム部門へ依頼する
  5. 同じパスワードを他のサービスでも使い回している場合は、そちらも変更する

対応後も、身に覚えのないログイン通知や認証コードが届いていないかを継続して確認しましょう。攻撃者がすでにログインを試みている可能性があるため、気づいた時点で情報システム部門へ共有することが重要です。

共通:速やかに報告し、再発防止につなげる

いずれのケースでも、「大丈夫だろう」と自己判断せず、情報システム部門や上司へすぐに報告することが重要です。報告が遅れるほど攻撃者が組織内部で活動する時間が長くなり、被害が拡大するリスクが高まります。

報告時は、次の項目をそろえて伝えてください。

  • 受信日時と送信元
  • URLや添付ファイルの有無
  • クリック・開封・入力など、実際に行った操作とその時刻
  • 操作後に気づいた端末やアカウントの異常

一方で、情報漏えいのリスクを踏まえ、関係部署以外への周知は情報システム部門と相談してから行いましょう。

報告を受けた情報システム部門は、ウイルススキャンの結果や通信ログをもとに、感染状況と機密情報の漏えい状況を確認します。漏えいが疑われる場合は、アクセス制御の見直しやログ管理の強化も検討します。

対応が一段落したら、なぜ気づけなかったのか、どの時点で防げた可能性があるのかを整理すると、組織として不足している対策が見えてきます。分析結果は追加の従業員教育やセキュリティポリシーの見直しにつなげましょう。あわせて、関係者への個別説明や全従業員への注意喚起といった社内共有を行うことで、同種のメールを受け取った社員が早期に報告しやすくなります。

標的型攻撃メールに関するよくある質問

標的型攻撃メールへの対応では、報告の要否や開封の影響など、現場で判断に迷う場面が少なくありません。あらかじめ社内で基準を共有しておけば、いざというときも落ち着いて行動できるでしょう。

最後に、実務でよく寄せられる質問にお答えします。

▼リンクや添付ファイルを開いていなくても報告すべき?
▼メールを開いたことは送信者にバレる?
▼プレビュー表示しただけでも開封したことになる?
▼訓練メールを開いてしまった場合はどうなる?
▼不審なメールに返信してしまったらどうする?

リンクや添付ファイルを開いていなくても報告すべき?

開いていない場合でも、不審なメールを受信した時点で情報システム部門へ報告することが望ましいです。受信者本人がリスクを正確に見極めることは容易ではありません。同じメールが他の社員にも届いている可能性があるため、報告は組織全体の防御につながります。

メールを開いたことは送信者にバレる?

メールを開いただけで、必ず送信者に開封が通知されるわけではありません。ただし、メール内に埋め込まれた画像やビーコンによって開封を検知される場合があります。「攻撃者に分かってしまうかどうか」よりも、感染の有無を確認し、必要な対応を速やかに取ることを優先してください。

プレビュー表示しただけでも開封したことになる?

プレビュー表示だけであれば、添付ファイルの実行やURLのクリックに比べ、感染につながる可能性は一般的に低いと考えられます。ただしHTMLメールでは外部画像の読み込みによって開封が検知されることもあります。不審なメールだと気づいたら追加操作をせず、情報システム部門へ報告したうえで、指示に従って削除してください。

訓練メールを開いてしまった場合はどうなる?

会社が正規に実施した訓練メールであれば、開いても実害が生じることは基本的にありません。開封やクリックの状況は記録され、訓練結果として集計されます。訓練の目的は不審なメールを見分ける力と報告する習慣を養うことにあるため、開いてしまった場合こそ報告の流れを練習する機会になります。組織によってはフォロー研修の対象となる場合もあるため、隠さず正直に報告しましょう。

不審なメールに返信してしまったらどうする?

不審なメールに返信してしまった場合は、まず情報システム部門へ報告し、それ以上やり取りを続けないことが基本です。氏名や部署、使用しているシステムなどを伝えていた場合、攻撃者に有益な情報を与えた可能性があるため、返信内容もあわせて共有しましょう。

パスワードなどの認証情報を送っていた場合は、指示に従って速やかに変更してください。返信によってアドレスが実在すると知られるため、より巧妙な追撃メールが送られてくることもあります。

まとめ:標的型攻撃メールは事前の備えと初動対応の両輪で防ぐ

標的型攻撃メールは、特定の組織や個人を狙い、機密情報の窃取や組織への侵入につなげるサイバー攻撃です。受信者の業務に沿った内容で送られるため、見た目だけで判断することは困難です。

見分ける際は、送信元・件名や本文・添付ファイル・URLを突き合わせて確認することが欠かせません。あわせて、OSやソフトウェアの更新、EDRの導入、送信ドメイン認証、従業員訓練、報告体制の整備を継続すれば、被害に至るリスクを大きく下げられます。不審なメールを受信した場合は情報システム部門へ速やかに報告し、添付ファイルを開いた場合は端末をネットワークから切断してください。認証情報を入力した場合は、情報システム部門の指示に従って速やかにパスワードを変更してください。

一方で、これらの対策を社内の情報システム部門だけで継続的に回すのは簡単ではありません。人材や専門知識の不足により、訓練の実施や報告体制の整備まで手が回らない企業もあるでしょう。そのような場合は、外部の支援サービスを活用することも有効です。

当社では、企業の情報システム部門を支援する各種サービスを提供しています。メールセキュリティや運用体制の見直しをご検討中の場合は、お気軽にご相談ください。

こちらのページではセキュリティ体制の構築に関するケーススタディをご紹介しています。
ぜひ、本コラムと併せてご覧ください。
情シスSAMURAI CaseStudy4(セキュリティ対策の外注・コンサルティング、クラウド化支援)

情シス運用によるセキュリティ対策サービスページはこちらから
情シス運用から始めるセキュリティ改革 by 情シスSAMURAI

『情シスSAMURAI』サービスページはこちらから
情シス業務のアウトソーシングでお悩み解決 情シスSAMURAI